欧州委、外国補助金規則の実施規則を採択、通知内容を一部簡略化

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月13日

欧州委員会は7月10日、外国補助金規則の手続きに関する詳細を規定した実施規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。外国補助金規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2022年12月9日記事参照)が2023年7月12日に適用開始となったことから、それに合わせたかたちだ。

EUでは、加盟国政府による特定企業への補助金を原則禁止していることから、EU域内市場で補助金を受けていないEU企業と域外国政府の補助金を受けた企業の間での公平な競争環境の確保の必要性が指摘されていた。外国補助金規則は、こうした問題に対応するため、域外国政府の補助金を受けた企業の域内市場での活動について、欧州委が審査する枠組みを設定した。欧州委が域外国政府からの補助金を審査する手段として、大規模な合併や公共調達手続きに関し、企業に事前通知を求める。また欧州委は、事前通知の対象外でも職権で調査を開始できる。欧州委は、事前通知の審査あるいは職権調査の結果、域内市場の歪曲(わいきょく)の懸念を認定した場合、是正措置を命じることができる。

実施規則は、事前通知に含めるべき情報などの通知フォームの内容や手続きのほか、欧州委の調査プロセス、事前通知や調査の対象企業の権利などの詳細を規定している。最も注目されたのは事前通知に含めるべき情報だったが、今回採択された実施規則案では、産業界からの批判を受け、2023年2月に発表した実施規則案から一部簡略化が図られている。

特に合併に係る事前通知においては、域外国政府によるあらゆる資本的貢献を通知対象とする実施規則案の方針を転換。実施規則は、詳細な通知の対象を外国補助金規則第5条が規定する域内市場の歪曲の懸念が最も高い類型に限定した。対象企業は、外国補助金規則第5条の類型に該当する、過去3年間に域外国政府により提供された1件当たり100万ユーロ以上の資本的貢献について、詳細な情報を事前通知に記載する必要がある。一方で、該当しない域外国政府による資本的貢献については、過去3年間に4,500万ユーロ以上を提供された域外国政府からの1件当たり100万ユーロ以上の資本的貢献に限定し、その概要の記載で足りるとしている。

公共調達に関しては、外国補助金規則第5条に該当する、過去3年間に域外国政府により提供された1件当たり100万ユーロ以上の資本的貢献についてはその詳細情報を、該当しない域外国政府による資本的貢献については、過去3年間に400万ユーロ以上を提供された域外国政府からの1件当たり100万ユーロ以上の資本的貢献の概要を、それぞれ事前通知に記載する。

なお、事前通知は2023年10月12日から義務化される。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 c24ad13febdd2a79