ニジェールで大統領警護隊によるクーデター発生

(ニジェール、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS))

アビジャン発

2023年07月31日

アフリカ西部のニジェールで7月26日、モハメド・バズム大統領の治安維持対策を不満として、大統領警護隊兵士らが反乱を起こした。同日、アマドゥ・アブドラマン大佐は国営テレビ放送を通じて、バズム大統領の退陣と、「祖国防衛国民評議会(CNSP)」の樹立を宣言するとともに、憲法の停止、政府と議会の解散、陸路・空路の国境封鎖、夜間外出禁止令を発表した。

翌27日には、ニジェール国軍参謀総長のアブドゥ・シディク・イサ将軍が「軍部内の致命的な衝突を避けるため」として、CNSPの声明に支持を表明。続く28日には、クーデターを首謀した大統領府警護隊司令官であるアブドゥラハマネ・チアニ将軍がCNSPの首班であることを宣言し、「バズム政権下で助長された治安悪化や失政に対処するため軍事政権を樹立し、ニジェールに正しい統治を復活させる。ニジェールが締結した国際協約は全て順守する」とする声明を発表した。バズム大統領は7月30日現在まで、大統領警護隊に拘束されているもよう。

アフリカ連合平和・安全保障理事会は7月28日、緊急会合を開き、クーデターを起こした軍部に対して即時、無条件で兵舎へ戻り、遅くとも15日以内に憲法秩序を回復するよう通告した。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は7月30日、ナイジェリアの首都アブジャで臨時首脳会議を開催し、加盟国によるニジェールとの貿易・金融取引を停止すると発表するとともに、10日以内に憲法秩序を回復しなければ軍事介入の可能性もあると警告した。国連のアントニオ・グテーレス事務総長やEUをはじめ、サヘル地域のテロ掃討でニジェールに派兵するフランスや米国など、国際社会はクーデターを強く非難。EUと米国は、ニジェールへの財政支援や安全保障分野の協力を停止することを通告した。一方、CNSPは、ECOWASがアフリカ諸国や特定の西側諸国と協力して、ニジェールへの軍事介入を意図しているとして非難した。

現地報道によると、首都ニアメでは、クーデター直後に軍部を支持する市民の一部が暴徒化し、政権与党本部の建物や付近の車が放火されるなどしたが、状況は落ち着きを取り戻し、商店や市場、銀行などは営業を続けている。他方、集会禁止令にもかかわらず軍を支持するデモが散発的に発生しており、30日には、フランス軍主導のテロ帰討に抗議する市民運動がロシアの国旗を振りながらデモに加わった。

ニジェールでは1960年のフランスからの独立以来、クーデターが4度起き、クーデター未遂も数多く発生している。近年、隣国マリやブルキナファソに跨る地域で、イスラム過激派が勢力を拡大し、治安悪化が深刻化している。こうした中、マリとブルキナファソでもここ数年、政府のテロ対策を不満とした軍事クーデターが相次ぎ、これら諸国はロシア寄りの姿勢を強めている。

ニジェールは、フランス、米国など欧米諸国との連携を重視してイスラム過激派対策を進めていただけに、政治的な混乱によって地域のさらなる不安定化につながることが懸念されている。

(渡辺久美子)

(ニジェール、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS))

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