オヨーンエルデネ首相が訪米、戦略的第三隣国パートナーシップに関係格上げ

(モンゴル、米国)

北京発

2023年08月23日

モンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は8月2~5日に米国を訪問し、2日にカマラ・ハリス副大統領と公式会談を行った。

会談で両氏は政治や防衛、経済、教育、人道分野でパートナーシップが強化されていると強調し、宇宙研究や電子開発、鉱物資源、物流、気候変動分野の今後の協力についても意見交換した。

また、モンゴル経済の多角化のため、双方は「戦略的第三隣国経済ロードマップ」を更新し、両国間の貿易・経済協力と米国からモンゴルへの投資拡大に期待感を表明した。さらに、両国は航空輸送に関する協定を締結し、2024年第2四半期(4~6月)からモンゴルと米国の間に直行便が就航することを発表した(注1)。

会談後、オヨーンエルデネ首相とハリス副大統領は「モンゴル・米国の戦略的第三隣国パートナーシップ」に関する共同声明を発表した。これにより、両国の関係は「戦略的パートナーシップ」から「戦略的第三隣国パートナーシップ」に格上げされたかたちとなった(注2)。

主な内容は以下のとおり。

  1. 経済協力の深化。世界のサプライチェーンにとって重要なモンゴルの鉱業分野の発展を支援するモンゴル・米国・韓国の3カ国協議(2023年6月28日記事参照)を歓迎する。
  2. 民主主義原則の推進。表現の自由、平和的集会の自由、信教の自由に対するコミットメントを再確認する。両国は国境警備を改善し、国境を越えた犯罪に対処するために、それぞれの法執行機関同士の協力と情報共有を強化する。
  3. 安全保障協力の強化。平和で安定したインド太平洋地域の実現のため、両国は非伝統的脅威や安全保障上の課題への取り組みなど、第三隣国防衛協力を強化する。米国は、モンゴルによる国連平和維持活動(PKO)や、世界の人権と民主主義の保護に対する長年の貢献を評価し、モンゴルのPKOを支援するため統合軽戦術車両20両を供与する。

その他、首相訪米に合わせて両国政府は下記の文書に署名した。

  • 戦略的第三隣国パートナーシップのための政府間経済協力ロードマップ
  • 運輸部門の協力に関するモンゴル道路運輸開発省と米国運輸省間の覚書
  • モンゴル知的財産庁と米国特許商標庁間の相互理解覚書

(注1)MIATモンゴル航空は8月7日、アイルランドの独立系航空機リース会社エアキャップ・ホールディングスと、2機のボーイング787-9の長期オペレーティングリース契約を締結したと発表している。1号機は8月11日に受領し、2号機は2024年第1四半期(1~3月)の予定。同機はフランクフルト、イスタンブール、ソウルとの路線に投入されるほか、2024年には米国、シンガポール、オーストラリアへの就航を予定している。

(注2)これまでにモンゴルが「戦略的パートナーシップ」より上位の関係を構築した国は、2014年に中国との「全面的戦略パートナーシップ」、2019年にロシアとの「友好・包括的戦略パートナーシップ」、2022年に日本との「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」がある。モンゴルはロシアと中国に国境を囲まれており、日本や欧米などとは物理的には国境を接していないが、外交政策上、「第三の隣国」と位置づけ、ロシア、中国と同様に重視している。

(藤井一範)

(モンゴル、米国)

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