100万円超の入社一時金の支給も、人材不足の一部職種で

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月02日

シンガポールでは、バスの運転手や看護師、警察など人材が不足している一部業界で、雇用主は高額な入社一時金を提示して地元労働力の確保を図っている。

オン・イエクン保健相は2023年7月19日、2023年に国内の高等専門学校や大学の新卒で公立医療施設や介護施設に採用された看護師に、1万5,000シンガポール・ドル(約159万円、Sドル、1Sドル=約106円)の入所一時金を支給すると発表した。同相は2022年11月21日、年内に外国人の看護師を含め約4,000人の看護師を採用する計画を明らかにしていた。また、警察は現在、1万~3万Sドルの入所一時金を提示している。

さらに、国内最大の公共バス運行会社、SBSトランジットは現在(2023年7月31日時点)、地元運転手の求人で、月給最大4,000Sドル(残業費と手当込み)とともに、入社一時金6,000Sドルを提示している。このほか、オンライン求人サイト、ジョブストリートによると、元気寿司や焼肉ライフなど飲食チェーンは、マネジャー募集広告で2,000Sドルの入社一時金と、月給3,100~5,000Sドルなどを提示している。

過熱気味の雇用市場、人材省はこの先の軟化見込む

人材省の2023年第2四半期の雇用統計(7月27日発表、暫定値)によると、2023年6月の外国人を含む失業率は1.9%と、3月の1.8%からわずかに上昇した。しかし、失業率は依然、低水準で推移している。同国の就労者数(外国人メイドを除く)は2023年第2四半期に前期比2万3,700人増と、7期連続で前期比増となった。ただ、人材省によると、第2四半期の就労者数の増加幅の大半が外国人で、建設分野が中心だった。

同省は、経済状況の減速を受けて「雇用市場が向こう数四半期に軟化する可能性」を指摘した。同省によると、向こう3カ月以内に人材を採用すると答えた企業の割合は2023年第1四半期の64.8%から、同年第2四半期に58.2%に縮小。また、従業員の給与を引き上げる意向を示した企業の割合も同時期に、38.2%から28.0%へと低下した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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