電池のライフサイクル全体を規定するバッテリー規則施行

(EU)

ブリュッセル発

2023年08月21日

EUでは8月17日、バッテリー製品の原材料調達から設計・生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定するバッテリー規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが施行された。同規則は、欧州委員会が2020年12月、「循環型経済行動計画」の第1弾として、バッテリー指令(2006年発効)の改正を提案し(2020年12月14日記事参照)、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が2022年12月9日に政治合意(2022年12月13日記事参照)。6月14日には欧州議会、7月10日にはEU理事会がそれぞれ採択した。2024年から順次、規定された開始時期に沿って各義務が適用される。

バッテリーは、2050年までの気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)を掲げる「欧州グリーン・ディール」を達成する上でも今後需要の拡大が見込まれている。今回の規則は自動車用、産業用、携帯型などEU域内で販売される全てのバッテリーが対象。カーボンフットプリントの申告義務や、リサイクル済み原材料の使用割合の最低値導入、廃棄された携帯型バッテリーの回収率や、原材料別再資源化率の目標値導入などを盛り込んでおり、サプライチェーンの見える化・強靭(きょうじん)化を通じて、域内の重要原材料の確保や戦略的自律を目指す。

カーボンフットプリントの申告開始時期はバッテリーごとに定めており、電気自動車(EV)バッテリーの場合、2025年2月18日または2024年2月18日までに採択される委任規則(計測方法)、実施規則(申告細則)の施行後12カ月後のいずれか遅い日以降に適用される。

リサイクル済み原材料の最低使用割合の開示については、産業用バッテリー〔2キロワット時(kWh)を超えるもの〕、EVバッテリー、SLIバッテリー(自動車用蓄電池)は、2028年8月18日または2026年8月18日までに採択される委任規則の施行後24カ月後のいずれか遅い方から義務付けられる。 対象となる原材料はコバルト、鉛、リチウム、ニッケル。LMT(電動自転車・スクーター用)バッテリーについては、2033年8月18日から開示義務が適用される。

また、LMTバッテリー、産業用バッテリー(2kWhを超えるもの)、EVバッテリーは2027年2月18日から、電子上の記録「バッテリーパスポート」を介し、ラベル表示情報に加え、原材料構成、カーボンフットプリントなどに関する情報へのアクセスを確保する必要があり、QRコードから読み取れるようにすることも定めた。

カーボンフットプリントの計測方法や、責任ある原材料調達などサプライチェーンに対するデューディリジェンス義務の詳細など、今後発表される委任規則案やガイドラインが引き続き注視される。

(薮中愛子)

(EU)

ビジネス短信 8c1881cdd8bc5842