米政府、UFLPAの事業者リストに中国企業2社追加、執行戦略も更新

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年08月03日

米国国土安全保障省(DHS)は8月1日、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく輸入禁止対象の事業者をまとめた「UFLPAエンティティ・リスト」の更新を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。翌2日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示し、即日有効となった。2022年6月のUFLPA施行以降、同リストが更新されるのは2023年6月に続いて2回目(2023年6月12日記事参照)。

UFLPAでは、新疆ウイグル自治区で生産した物品だけでなく、UFLPAエンティティ・リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの掲載事業者が全体または一部を生産した製品も輸入禁止対象となる(2022年8月4日記事参照)。DHSが議長を務める強制労働執行タスクフォース(FLETF、注1)は今回、鉛蓄電池メーカーのキャメル・グループと、食品添加物などを製造する晨光生物(Chenguang Biotech Group)の中国企業2社をリストに追加した。晨光生物の新疆ウイグル自治区の子会社も併せて掲載されている。今回の追加により、リスト掲載事業者は24となった(注2)。

DHSは8月1日、UFLPAの執行戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの更新も発表した。FLETFはUFLPA施行から1年ごとに執行戦略の更新事項をまとめた報告書を議会に提出するよう義務付けられている(2022年6月21日記事参照)。今回の更新では、UFLPAエンティティ・リスト更新のほか、米国税関・国境警備局(CBP)による法執行に必要な追加資源や、NGOや民間部門との協力策について報告した。

執行戦略では、優先的に法執行を行う分野として、(1)アパレル製品、(2)綿・綿製品、(3)ポリシリコンを含むシリカ製品(太陽光発電製品など)、(4)トマト・トマト製品を記しているが、今回の更新では、新たな分野の明示的な追加はなかった。一方で、学術機関やNGOが、強制労働のリスクがあるとして特定した分野を監視する重要性を強調している(注3)。CBPはUFLPA施行から1年で、優先分野を中心に4,000件超の貨物を差し止めた(2023年7月26日記事参照)。2023年に入り、優先分野以外での差し止めも増えており、これにはNGOなどの報告に基づく執行も寄与しているとみられる。

UFLPAを巡って、連邦議会はデミニミス・ルール(注4)が法執行の抜け穴になっていると問題視している(2023年4月13日記事参照)。DHSのロバート・シルバース次官は7月、中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC、注5)の公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに提出した証言で、この問題に対処するための戦略を追求していると説明したが、今回更新した執行戦略では同ルールへの言及はない。

(注1)DHSのほか、米国通商代表部(USTR)、労働省、国務省、司法省、財務省、商務省が参加する省庁横断組織。UFLPAの執行戦略の策定やUFLPAエンティティ・リストの整備を担う。

(注2)掲載事業者と併せて指定されている子会社や関連組織を除く。

(注3)具体的には、レッドデーツ、そのほかの農産物、ビニール製品、アルミニウム・同製品、鉄鋼・同製品、鉛バッテリー・リチウムイオンバッテリー、銅・同製品、エレクトロニクス、タイヤやそのほかの自動車部品を挙げている。

(注4)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。デミニミスは2016年に成立した「2015年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの200ドルから、現在の800ドルに引き上げられた。

(注5)議会上下両院の議員と、大統領が指名した政府高官で構成する委員会。中国の人権と法の支配状況を監視し、大統領と議会に年次報告書を提出する義務を負う(2022年11月21日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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