TSMC、ドイツ東部に欧州初の半導体工場建設を決定

(ドイツ、台湾)

ベルリン発

2023年08月23日

半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は8月8日、ドイツ東部ザクセン州ドレスデンに、TSMCにとって欧州初の工場を建設する計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の投資計画でTSMCは、ボッシュ(ドイツ)、インフィニオン・テクノロジーズ(同)、NXPセミコンダクターズ(オランダ)と、合弁会社ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)を設立し、共同で工場を建設する。工場運営はTSMCが担う。出資比率は、TSMCが70%、ボッシュ、インフィニオン、NXPがそれぞれ10%。投資総額は100億ユーロ超の見込みだ。TSMCは同日の取締役会で、ESMCへの最大34億9,993万ユーロの投資を承認した。欧州半導体法(2023年8月2日記事参照)に基づく補助金の欧州委員会による承認が完了次第、投資を実行する。ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(8月8日)は、連邦政府が「気候・変革基金(KTF)」から拠出する補助金額は50億ユーロに上ると報じた。

TSMCの魏哲家・最高経営責任者(CEO)は「欧州は特に自動車と産業分野の半導体の技術革新に非常に有望な場所だ。欧州の才能ある人材と当社の先進的なシリコン技術でのイノベーション実現を期待する」と述べた。

ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は「TSMCの投資はドイツと欧州の半導体の供給確保に貢献するだろう」と今回の投資決定を歓迎した。さらに「企業のみならず、投資先としてのドイツも国際的な競争にさらされているため、迅速に物事を進めなければならない」として、経済・気候保護省は工場建設を前倒しで開始できる承認を付与したことを明らかにした。

ザクセン州のミヒャエル・クレッチマー州首相は「新たな半導体工場の建設は、欧州最大のマイクロエレクトロニクスクラスターのザクセン州を経済と技術の拠点としてさらに強化し、成長させる強力な後押しとなる」と語った。同州は欧州産の半導体の3分の1が生産される半導体産業の集積地だ(2021年6月15日記事参照)。また、トーマス・シュミット州地域開発相は、TSMCの欧州進出が半導体サプライチェーンの安定に大きく貢献すると述べた。

連邦政府、気候・変革基金から半導体振興予算も拠出

連邦政府は8月9日、特別基金「気候・変革基金(KTF)」から2024~2027年に総額2,118億ユーロを支出する支出計画案を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同計画案には、エネルギー効率の高い建物、産業の脱炭素化、再生可能エネルギー、e-モビリティーと充電インフラの拡大、水素産業に加えて、気候中立に資する半導体の振興に対して、2027年までに122億ユーロ(うち2024年に40億ユーロ)を支出することを盛り込んだ。この予算は、前述のTSMCへの補助のほか、インテル(2023年6月29日記事参照)、インフィニオン(2023年5月8日記事参照)、ZFとウルフスピード(2023年2月7日記事参照)の半導体製造関連への補助などに充てられる見通しだ。

(小川いづみ、日原正視、中村容子)

(ドイツ、台湾)

ビジネス短信 9dba962cf9e1cf52