電子インボイスを2024年上期から段階的に導入、内国歳入庁がガイドライン公表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年08月09日

マレーシア内国歳入庁(IRB)のモハマド・ニゾム・サイリ最高責任者(CEO)は2023年国税会議の会場で8月1日、「eインボイス(電子適格請求書)」、いわゆる電子インボイスを2024年6月から段階的に導入するとあらためて表明した。電子インボイス制度のガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、7月21日に公開された(IRBプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、マレー語のみ)。これに先立ってIRBは5月、「年間売上高1億リンギ(約31億円、1リンギ=約31円)超の企業に対し、電子インボイスシステム導入を2024年6月から義務化する」と発表していた。制度の導入自体は、2022年10月に発表された2023年国家予算案に盛り込まれていた。

電子インボイスとは、サプライヤーとバイヤー間の取引をデジタル化したもので、当事者双方の詳細、商品説明、数量、価格、税額、合計金額など、従来の請求書と同様に重要な取引情報が電子処理されるシステムだ。モハマド・ニゾムCEOは、電子インボイスは税制を合理化し、透明性を高めるとともに、より正確なコンプライアンスリスク評価を可能にすると説明。統計には表れない「影の経済(シャドーエコノミー)」による歳入漏れにも対処できるようになるとした。特に、世界経済の先行きが不透明な中にあって、国内経済の持続可能性を確保するためにも、税収が重要と強調した。

2027年1月までに全ての企業に導入義務

IRBによると、2024年1月に、選定された企業を対象とするパイロットプロジェクトを立ち上げる。この際、選定対象外の企業も、自主的に電子インボイスを導入することは可能だ。次いで同年6月に、年間売上高が1億リンギ超の企業(約4,000社)に導入を義務付ける。さらに、2025年1月に同5,000万リンギ超1億リンギ以下の企業、2026年1月には2,500万リンギ超5,000万リンギ以下の企業も対象とする。2027年1月には全ての企業に導入が義務付けられる。IRBは5月以降、首都圏を皮切りに電子インボイス導入に関する説明会を全国で開催している。

ジェトロの中小企業海外展開現地支援プラットフォームコーディネーターの加藤芳之氏は「電子インボイス制度により全ての取引を透明化することで、『徴税力の向上』と『事業の効率化』が達成されるとされるが、やはり前者の目的が大きいとみている。政府の立場からすれば、全ての取引がIRBに筒抜けになるため、大幅に徴税力が上がるメリットがある。一方で、納税者側からすると、業務の効率化という側面はあるものの、取引の都度の認証が必要になるなど、相当に煩わしい作業も増加するとみられる」と述べた。日本企業もその規模に応じて、会計ソフトの見直し含めた準備が必要になると指摘した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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