景気見通し軟化でも企業の7割が賃上げへ、シンガポール経済団体調査

(シンガポール)

シンガポール発

2023年09月15日

シンガポール経済連盟(SBF)の調査(9月12日発表)によると、同国に拠点を置く内外の企業で、向こう12カ月に経営見通しが「悪化する」と答えた企業は35%と、「改善する」と答えた企業の28%を上回った。経営見通しの「横ばい」を見込む企業は37%だった。しかし、景気見通しが軟化する中でも、向こう12カ月の間に「賃上げする」と答えた企業は67%と、「賃金の現状維持・給与凍結」(32%)と「賃下げする」(1%)を大きく上回った。

SBFは国内最大の経済団体。同調査は7月20~31日に行われ、同国の内外の企業282社(79%が中小企業)が回答した。同調査によると、過去12カ月間のうちに賃上げを実施した企業は76%に上った。また、過去12カ月間に、賃金を現状維持・給与凍結した企業は22%で、賃下げをした企業は2%にとどまった。

さらに、過去12カ月に賃上げを実施したと答えた企業の61%が、向こう12カ月の間に賃上げに踏み切ると答えた。SBFは報道発表の中で、賃上げが「景気見通しが軟化するなかで、ビジネスコストの負担増につながる」と懸念を示した。

人材の増員を見込む企業・団体は48%、人材がタイトな状況

また、米国人材会社マンパワー・グループの調査(9月12日発表、注)によると、2023年第4四半期(10~12月)に人員の増員を見込んでいるシンガポール企業・団体は48%となり、現状維持(38%)と減員(12%)を上回った。「不明」と答えた企業は2%だった。

分野別では、エネルギー・公益事業の企業・団体のうち97%が、必要な人材採用に困難をきたしていると回答した。また、金融・不動産では同割合は89%、ヘルスケア・ライフサイエンスが88%、輸送・物流・乗用車が85%、情報技術が84%、通信サービスが82%、産業・素材が79%、消費財・サービスが77%と、ほぼ全ての業界で人材採用が極めて難しい状況が浮き彫りとなった。

(注)マンパワー・グループの調査は2023年7月に実施され、510の企業・団体が回答した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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