連邦政府、水素技術研究センターを2カ所に新設へ

(ベルギー)

ブリュッセル発

2023年09月25日

ベルギー連邦政府は9月15日、アントワープとシャルルロワの2カ所に水素技術研究センターを新設すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、オランダ語、フランス語)。それぞれに重点分野を設ける。研究センター設立に当たっては、EU復興基金(2023年2月24日記事参照)を財源とする復興計画(2021年6月29日記事参照)から1,620万ユーロを拠出する。これらの研究センターの設立により、水素戦略(2022年10月26日記事参照)を推し進め、水素技術のパイオニアとしての地位を強化したい意向だ。

ベルギー北部のアントワープに設立予定の研究センターは、石油化学、水素分子の輸送・貯蔵・圧縮、洋上風力発電、海上輸送用内燃機関に焦点を当てた研究を行う。敷地面積は2.2ヘクタールで、アントワープ港に隣接するサーキュラーエコノミー(循環型経済)に特化したネクストジェン(NextGen)工業地域に設置される。アントワープ港は欧州最大級の石油化学クラスターを形成しており、豊富な航路や後背国への接続性の良さが強みだ。ベルギーをグリーン水素の輸入・輸送拠点とするという連邦政府の目標の重要拠点となっている。

ベルギー南部のシャルルロワの研究センターは、内陸運河に隣接するクリーンテック地域にある2.5ヘクタールの敷地に建設される。電解槽やプラズマ分解による水素の製造、鉄鋼やセメントなどの重工業向けの水素燃焼を利用した熱生産などの研究を担う。また、液体水素に特化し、適合するバルブや熱交換器など機械部品の開発を進めることで、航空宇宙部門の競争力を強化する。

2つの研究所は「VKHyLab」と呼ばれ、2025年に着工、2026~2027年の完成を目指す。水素研究で実績を有するフォン・カルマン流体力学研究所(VKI)が、今回のプロジェクトの主体となり、研究戦略を策定する。また、アトラスコプコ(産業機械)や、Be Blue(素材エンジニアリング)、CMB(海上輸送)、フラクシーズ(エネルギーインフラ)、AGCガラス・ヨーロッパ、シリス(技術革新)、ブリュッセル自由大学といったパートナーとの産学連携を支援する。

連邦政府のティネ・バン・デ・ストラーテン・エネルギー相は、研究センターについて「水素とその関連技術の分野で活躍するベルギーの企業や研究機関の主導的地位の強化につながるもので、イノベーションを生み出す中心的存在となるだろう」とコメントした。

(大中登紀子)

(ベルギー)

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