労働法改正で、リモートワークの制度やルールを明文化

(チェコ)

プラハ発

2023年09月20日

チェコで労働法改正法が9月19日、官報に掲載された。これにより、10月1日付でリモートワークなどに関する新たな規定が導入される。

リモートワークに関して法令化された内容は次のとおり。

(1)リモートワークは、公的機関により実施が義務付けられる場合を除き、雇用者と被雇用者が文書で合意した場合のみ導入される。

(2)以下に該当する被雇用者がリモートワークの実施を文書で要望し、雇用者がこれを許可しない場合、雇用者はその理由を文書で示す義務を負う。

  1. 妊娠中の者
  2. 9歳未満の子供を扶養する者
  3. 長期的に中~重度の障がい者をほぼ単独で介護する者

(3)リモートワークの実施により被雇用者に発生する経費に関して、雇用者と被雇用者は、雇用者の負担有無や詳細を文書により合意する、あるいは雇用者が内規により定める。経費の雇用者負担が定められた場合、その金額は、被雇用者の証明に基づく実費、あるいは時間当たりの定額に基づく。

リモートワーク経費の定額は、チェコ統計局が公表する、国内の平均的世帯のリモートワーク費用に基づき、労働・社会福祉省令により定められる。同省は、2023年度について、1時間当たり4.6コルナ(約30円、1コルナ=約6.5円)を提案している。

このほか同法は、上記(2)1.と3.に該当する被雇用者、および15歳未満の子供を扶養する被雇用者が時短勤務などを要望する場合、雇用者は、深刻な操業上の理由などがなければこれを許可し、不許可の場合はその理由を文書で説明する義務を負うことなども定めている。

マリアン・ユレチカ労働・社会福祉相は、今回の改正に関して、「リモートワークは拡大しつつある。われわれもこのトレンドに応じて、条件を整備しなければならない」と説明している。また、乳幼児扶養者などの特例に関しては、「特に小さな子供を持つ親あるいは障がい者を介護する者に対して、法により支援し、家族生活と仕事との両立のための環境を整えるために必要なもの」と述べた。

改正法には、産業界も賛意を表明している。産業連盟は8月14日付の記事の中で、同連盟雇用者部門部長のダグマル・クジュバルトバー氏の声明として、「雇用者団体として改正法を支持する。労働条件が明文化されることは正しいこと」とコメントした。同氏は特に、雇用者側の主張が受け入れられ、乳幼児扶養者などに対する特例や、リモートワーク経費の雇用者負担などが完全義務化されず、柔軟性が保たれたことを評価した。

(中川圭子)

(チェコ)

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