現地発日系IT企業に聞いた「日本流」で業績を伸ばすコツ

(パキスタン)

カラチ発

2023年09月29日

日本向けにソフトウエアのオフショア開発サービスを展開するジャパンステーション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(本社:イスラマバード)が業績を伸ばしている。2020年10月に創業後、第2期(2021年10月~2022年9月)の売り上げは前期比30%増、第3期は同70%増を見込む。日本企業からのソフトウエア受託開発事業が順調に拡大しているためだ。

同社の最高経営責任者(CEO)江刺家(えさしか)愛氏は9月25日、ジェトロの取材に対して「日本人のマインドセットでパキスタン人技術者の工程管理を行い、日本クオリティーのサービス提供を徹底している。これがお客さまの信頼につながり、リピートしていただけている理由」と、日本スタイルの経営戦略を強調した。

江刺家氏の経歴はユニークだ。情報処理の学校を卒業後、大手総合電機メーカーに就職し、役員秘書を務めた。しかし、グローバルな時代の到来を確信し、ITを武器に世界で活躍したいと考えて、オーストラリアへの英語留学を経験した。帰国後は人材派遣会社に就職、IT技術者として官公庁や民間企業でシステム運用や開発を担った。その後、東京でビジネスをしていたパキスタン人男性(現同社会長ファラズ氏)と知り合って結婚、2018年にパキスタンに移住した。一度は出産で帰国したものの、2019年10月に再びパキスタンに渡り、2020年10月に同社を起業した。「起業後、一番の壁は会社員脳から経営者脳へのマインドセットの切り替え。次の壁は日本人のマインドセットを維持しながらパキスタン人技術者を理解し、お客さまと技術者を調整することだった」と語る。

写真 ジャパンステーションの江刺家愛CEO(同社提供)

ジャパンステーションの江刺家愛CEO(同社提供)

ジャパンステーションは、日本のIT企業のパキスタン進出支援も行っている。文化的背景の違いなどから、日本のIT企業がパキスタン人技術者とオンラインでコミュニケーションをとることが難しいためだ。江刺家氏は「日本企業がパキスタンに進出した方がものごとを素早く進められ、現実的だ」と述べた上で、「まず弊社の事務所内に机ひとつ置いて3カ月お試し進出してみるのもよい。この国に住み、優秀で親日的な技術者に接すれば、きっと進出の心理的ハードルが下がる。競合企業が進出しても構わない」と語った。

写真 パキスタン政府主催のナショナルITセミナー(2023年7月20日)のパネルディスカッション。右から2人目が江刺家愛CEO(同社提供)

パキスタン政府主催のナショナルITセミナー(2023年7月20日)のパネルディスカッション。右から2人目が江刺家愛CEO(同社提供)

「日本にIT技術者を送り出すには、日本語教育は避けて通れない。日本語学校を作り、ハードスキル(語学とIT技術)とソフトスキル(協調性や時間管理)、それに加えて、日本のマナーとルールを事前に教えたい。これをやらないと、弊社も成長していくことはできないだろう」とした、同氏は飛躍に向けた次なる構想を語った。

(山口和紀)

(パキスタン)

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