中銀、3年5カ月ぶりに政策金利を引き下げ、7.50%に

(ペルー)

リマ発

2023年09月19日

ペルー中央準備銀行(BCR)は9月14日、政策金利を7.75%から7.50%に引き下げると発表した。2020年4月以来3年5カ月ぶりの利下げとなる(2020年4月13日記事参照)(添付資料表参照)。BCRは今回の決定について、この先、継続的な利下げサイクルを開始するわけではなく、引き続きインフレ状況など各種経済指標をみた上で調整すると示唆している。今回の決定については、次を考慮したと説明している。

  1. 8月のインフレ率が0.38%で、食料とエネルギーコストを除くと、0.24%を記録。直近12カ月間の累計インフレ率は7月の5.88%から8月には5.58%に低下した。食料とエネルギーコストを除いた累計インフレ率も7月の3.89%から8月には3.81%に低下した。しかし、いずれも依然として政府目標値(1~3%)を上回っている。
  2. 2021年後半から続いている原油や食料価格の顕著な高騰に加えて、国際紛争などによる影響が世界的に過去数年間で類を見ないインフレを引き起こし、先進国や中南米地域の中央銀行目標インフレ率を大きく上回っていた。しかし、2023年に入って多くの国々ではインフレ率が低下傾向にある。ペルーの場合は、一部食料の供給不足による影響で一過性のインフレ率上昇が記録されているが、6月以降から徐々に正常化傾向にある。
  3. インフレ率は今後も低下傾向を続け、前年比で政府目標値(1~3%)内に収まるのは、世界的な食料や燃料価格の高騰が緩和され、社会争議がもたらした農産業分野の需給ショックが回復し、インフレ率予想が低下に転じる2024年初頭となる見通し。
  4. 今後12カ月の累計インフレ率の見通しは7月の3.57%から8月には3.36%に減少し、政府目標値(1~3%)内に近づいている。
  5. 8月の経済評価速報値や見通しなどの指標の多くは前月比で緩やかな回復を見せているが、依然として悲観的見通しが継続している。その背景には、社会争議やエルニーニョ現象などが予想以上に経済活動や内需に影響したことがある。
  6. 先進国の金融引き締めや中国経済の成長鈍化、国際紛争の影響などによるグローバルリスクが残るものの、世界経済の成長見通しは緩やかに上昇傾向にある。

BCR理事会では、インフレとその見通しや経済動向などを引き続き注視しながら、必要に応じて緩和的金融政策を維持しつつ、不安定な金融市場を下支えしていくとしている。次回のBCR金融政策決定会合は10月5日を予定している。

(注)エルニーニョ現象による気象変動の影響でレモンや玉ねぎなど一部の野菜の生産量が減少し、市場への供給不足が発生している。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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