管理システム導入で輸入が一層困難に、輸入許可の厳格化や代金支払い遅延が問題との声も

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年09月08日

アルゼンチンでは、2022年10月12日に「アルゼンチン共和国輸入システム(SIRA)」が導入されて以降、財の輸入が一層困難になっている。輸入許可が下りにくいことに加えて、輸入代金の支払いに相当な時間を要することも問題になっているという。SIRAによるアルゼンチンへの財輸入手続きとその問題点について、関係日系企業の声もまじえて紹介する。

アルゼンチンでは輸入に際して、(1)輸入ライセンス制度、(2)経済・財務能力評価制度(CEF)、(3)輸入許可の取得(SIRAの取得と呼ばれる)、(4)輸入代金の支払い、の4つの壁があるといわれる。

輸入ライセンス制度には、自動ライセンスと非自動ライセンスの2つがあり、現状ではほとんどの完成品が非自動ライセンスの取得対象品目に指定されており、自動輸入ライセンスの対象品目は、医薬品や肥料、原材料に限られる。現状、非自動輸入ライセンスの対象品目は輸入許可が下りにくくなっているようだ。

輸出産業である自動車製造用の部品や肥料などの輸入を手掛ける企業に聞くと、輸入許可の取得については比較的問題なく行われているという。他方、国内に競合品の製造者がいる、あるいは製造を行わずに輸入販売のみを行っている企業の場合は、この輸入許可の取得が難しくなっているようだ。例えば、国内に競合品のない消費財を輸入している日系企業によると、2023年8月は輸入許可を取得できなかったという。

最近、問題になっているのは、企業の財務能力を評価するCEFだ(2022年2月16日記事参照)。CEFの評価額が低くなり、輸入申告そのものができなくなるということが一部の日系企業でも発生しているという。

SIRAでは、輸入許可の取得と同時に輸入代金の支払い時期がシステム上に明示される仕組みとなっているが、品目や輸入金額ごとの支払い時期の目安などは、中央銀行通達などの規則の中に明文化されていない。それでも、輸入代金の支払い時期は、輸入通関日から180暦日後が標準で、最近は輸入通関後365暦日での承認も少なくない。支払いできるようになるまでの期間が長いだけでなく、最近では、輸入許可の取得時に明示された支払い時期が、その後、当局により一方的に遅延させられる問題が生じているという。中には、支払い可能日が明示されず、いつ支払えるかわからないという事案もみられる。なお、明示された支払い時期以前に輸入代金を支払うのは現状、非常に困難となっているようだ。重要インフラ工事向けの資材、外国金融機関から融資を受けて輸入するものなどは例外的に可能だが、対象は限定的だ。

なお、2023年の4月末ごろから、中国の人民元決済も可能になっているが、一部の日系企業によると、最近は人民元決済でSIRAを申請しても許可は下りにくいという。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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