フォン・デア・ライエン委員長、一般教書演説でEU域内産業支援を強調

(EU)

ブリュッセル発

2023年09月14日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は913日、欧州議会本会議で、今後1年間の欧州委の活動方針を表明する一般教書演説を行った(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。フォン・デア・ライエン委員長の任期は202410月末までで、今回の一般教書演説は任期中最後のものとなる。今後の去就に関心が集まる中で、現体制のこれまでの成果を挙げつつ、次期体制に向けた政治的メッセージを含む内容となった。

まず、フォン・デア・ライエン委員長は、欧州グリーン・ディール政策、デジタル化促進、地政学重視を掲げた2019年の就任当初の施政方針(2019年12月5日記事参照)のうち90%以上で成果を上げたと強調した。欧州グリーン・ディールに関しては、気候変動対策を経済成長戦略に転換し、投資や技術革新の方向性を明確にしたことで、成果が着実に出ているとした。関連法案が成立し、今後さらなる規制強化が見込まれる中で、一部では欧州グリーン・ディールへの反対意見が強まっているが、「われわれは(欧州グリーン・ディールの)野心的な路線を維持し、それによる成長戦略を貫く」と表明した。

次に、産業政策に関して、フォン・デア・ライエン委員長は、EUは競争力維持に向けて「どんな手段も用いる」用意があると強調した。具体的には、グリーン・ディール産業計画(2023年2月3日記事参照)の一環として、20233月に発表したネットゼロ産業法案(2023年3月20日記事参照)と重要原材料法案(2023年3月22日記事参照)に言及し、早期成立の必要性を訴えた。また、欧州委は今後も産業界の脱炭素化に向けた取り組みを支援するとし、EUの競争力が高いとされる風力発電に関して、許認可の迅速化、オークション制度の改善、財政支援などを含む新たな政策パッケージを提案する予定であることを明らかにした。

グリーン・ディール産業計画は当初、米国のインフレ削減法(IRA)への対抗策という意味合いが強かったが、今回の演説では中国に対する批判が目立った。EUの域内市場で、圧倒的なシェアを誇る中国産太陽光パネルや、存在感が強まっている中国産電気自動車(EV)を例に、中国政府の補助金を問題視。中国産EVについては、相殺関税の賦課を視野に調査を始めることを発表した。このほか、中国が半導体や太陽光パネルの製造に不可欠なガリウムとゲルマニウム輸出制限(2023年7月4日記事参照)を課していることに触れ、域外国との連携策である「重要原材料クラブ」の第1回会合を2023年内に開催し、日本、米国、オーストラリアなどとの協力強化を図るとした。

ウクライナを含む、EUの東方拡大の重要性強調

ウクライナに関しては、EU加盟問題(2022年5月19日付地域・分析レポート参照)が演説の中心となった。フォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナのEU加盟の方向性をあらためて支持。一方で、EUの東方拡大は戦略的安全保障上の利益とし、西バルカン諸国やモルドバのEU加盟の必要性も同様に主張した。ただし、EU加盟には所定の条件を満たす必要があるとする従来の立場を維持しており、いずれの加盟候補国についても、具体的な加盟時期や加盟に向けた道筋への言及を避けた。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 cdee10fbad157742