BMW、日本で初めて燃料電池車の公道走行実験、福岡市で

(ドイツ、福岡)

福岡発

2023年09月11日

ドイツの大手自動車メーカーのBMWは9月6日、燃料電池車(FCEV)の公道走行実験を、日本で初めて福岡県福岡市中央区で実施した。

公道走行実験に使用された車両は、2022年12月に少量生産の開始が発表された「iX5ハイドロジェン」(2022年12月8日記事参照)。「iX5ハイドロジェン」は、実証実験や技術デモンストレーション用に約100台生産され、BMWは2020年代後半の市販化を視野に入れている。車両の燃料電池システムはミュンヘンの自社施設で生産される一方、燃料電池セルはトヨタ自動車から調達している。

「iX5ハイドロジェン」の特長は、3~4分の水素補給で最長504キロ走行でき、電気自動車(EV)の充電時間と比べて燃料補給に時間がかからないことだ。BMWは2021年12月、2030年までに全世界の新車販売台数の少なくとも50%をバッテリー式電気自動車(BEV)にするとの目標を掲げた。また、同社のオリバー・ツィプセ最高経営責任者(CEO)は2023年3月、年次総会で「この勢いが継続すれば、2030年より前に全世界で販売する自動車の半数以上はBEVになるだろう」と述べ、目標が前倒しで達成されるとの見通しを示した(2023年3月23日記事参照)。

BMWの7月25日付発表によると、同社は今後、日本各地で公道走行実験を行い、さまざまなデータを取得する予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。さらに、同社は、官公庁や行政機関、大学など、各方面の専門家から製品のフィードバックを集め、それらをドイツのBMW本社に送り、製品開発に役立てることを狙いとしているとも説明している。

他方、今回FCEVの公道走行実験が行われた福岡県でも、2022年8月に「福岡県水素グリーン成長戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を策定し、新たな産学官連携組織として「福岡県水素グリーン成長戦略会議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を立ち上げるなど、全国に先駆けて水素社会の実現に向けた取り組みを進めている。FCEVの普及は、同会議が掲げた戦略の3本柱の1つ「水素利用の拡大」(注)に寄与するものだ。カーボンニュートラルに向けた官民それぞれの思惑が、FCEVの開発・発展を後押ししている。

(注)このほか、「水素製造のイノベーション」と「水素関連産業の集積」の柱を掲げている。

(片岡一生)

(ドイツ、福岡)

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