韓国政府、尿素の需給状況を点検、問題なしと発表

(韓国、中国)

ソウル発

2023年09月19日

韓国産業通商資源部は9月14日、「産業サプライチェーン点検会議」を開催した。車両用尿素を輸入・流通する企業や業界団体、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)などが参加し、車両用尿素のサプライチェーン(供給網)の状況を把握した。

これは、9月8日に「韓国経済新聞」や「毎日経済新聞」などをはじめとした韓国メディアが「中国当局による肥料メーカーに対する尿素の輸出中止指示により、2年前(注1)のような尿素水不足問題が生じかねない」と報じたことを受けたもので、産業通商資源部を中心に点検を行ってきた。

同会議では、各参加者は次のように報告し、現在の需給状況に問題はないと発表した。

  • 車両用尿素の在庫は70日分(民間の在庫55日分と調達庁の備蓄15日分)が確保されている。また、2.5カ月分の輸入契約が既に締結されていて、11月まで順次輸入される予定。
  • 東南アジアや中東など代替先も確保済みで、有事の際に備えて導入を打診している。
  • 中国国内の尿素の取引価格は横ばい基調で、現地の尿素企業による生産量も回復しているなど、追加の輸出制限はないと見られる。

一方で、流通業界からは「消費者の不安などにより、オンラインなどで一部品薄となっている」といった状況も報告された。

産業通商資源部は「今回、中国が輸出を制限した尿素は肥料用(注2)で、中国政府レベルの公式措置ではないことを複数の外交チャネルを通じて確認した」とし、「2年前とは異なり、在庫量を適正に維持しており、対応の態勢も整っているので、国民には心配しないでほしい」と強調した。

(注1)尿素はディーゼルエンジン貨物車などに使われる尿素水の原料。2021年11月に中国が輸出を制限したことによって、当時、尿素の総輸入に占める対中輸入の割合が60%を超えていた韓国では、物流の混乱など大きな影響が生じた(2021年11月9日記事参照)。

(注2)産業通商資源部によると、2023年1~7月の対中輸入の割合は、工業用・車両用で90.2%、農業用で17.4%。

(橋爪直輝)

(韓国、中国)

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