日・イタリア社会保障協定の説明会開催、2024年春の発効見通し

(イタリア、日本)

ミラノ発

2023年10月17日

「社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定(略称:日・イタリア社会保障協定)」に関する説明会が10月3日にローマ、4日にミラノでそれぞれ開催された。日本の厚生労働省と日本年金機構から会場に講師を迎え、在イタリア日本商工会議所、外務省(在イタリア日本大使館、在ミラノ日本総領事館)、ジェトロの共催で実施した。在イタリアの日本人駐在員などを中心に、会場とオンライン合わせて140人以上の参加があり、関心の高さがうかがえた。

日・イタリア社会保障協定は、2国間の公的年金制度などに関する適用調整などを行い、企業・個人の負担を軽減し、人的交流や経済交流を促進することを目的として、2009年2月にローマで署名が行われたが、両国の法制度の違いなどの理由から協議が長期化し、発効には至っていなかった。

説明会では講師から、両国間で発効に向けた手続きが現在進められており、特段の問題がなければ、2024年春に発効する見通しで、同協定に関する解説と実務的な手続きなどについて説明があった。

対象となる社会保障制度は両国の年金制度と雇用(失業)保険制度。協定発効のポイントは2点あり、1点目は保険料の二重負担が解消されること、2点目は相手国の年金給付申請書などを自国の年金機関で代理受理できるようになり、申請者の利便性が向上することだ(注)。

1点目については、日・イタリア間で現在、企業から相手国に一時派遣される被用者などについて、両国の年金制度と雇用保険制度への強制加入による二重加入の問題があり、企業・個人にとって大きな負担となっている。協定が発効すれば、年金制度については、就労地国の年金制度にのみ強制加入することが原則となるが、例外的に派遣期間が5年以内の見込みの一時派遣駐在員などについては、派遣元国の年金制度にのみ強制加入することとなる。雇用保険制度についても、派遣期間が5年以内の見込みの一時派遣駐在員等について、派遣元国の雇用保険制度にのみ強制加入することとなる。なお、日本からイタリアに派遣される被用者は、派遣期間にかかわらず、日本の雇用保険制度に加入することとなる。

仮に駐在員として日本からイタリアへの派遣期間が5年以内の見込みで一時派遣される場合、協定発効後はイタリアの制度への加入が免除される。そのためには、原則として派遣前に日本年金機構から適用証明書の交付を受ける必要がある。また、協定発効前からイタリアへ派遣されている場合は、発効日を起算点として、残りの予定派遣期間が5年以内と見込まれる場合、イタリアの制度への加入が免除される。協定発効日から免除を受ける場合は、発効日から6カ月以内に日本年金機構へ適用証明書の交付申請を提出する必要がある。

協定の詳細や留意事項、手続きの詳細などについては、同説明会資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照の上、各問い合わせ窓口へ問い合わせを。

協定発効により、両国間のビジネス・人的交流のさらなる促進が期待される。

(注)日・イタリア社会保障協定は、年金加入期間の通算規定は含まない。

(山本千菜美)

(イタリア、日本)

ビジネス短信 1339d5b603bba9de