現代自動車の小型実証プラント、11月に正式稼働へ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年10月19日

韓国の現代自動車がシンガポールに開設準備を進めていた電気自動車(EV)を中心とする小型実証プラント「現代自動車イノベーションセンター・シンガポール(HMGICS)」が202311月に、正式開業する。同センターのアルペシュ・パテル副社長兼スマートファクトリー・テクノロジー・イノベーション・グループ主任が1018日、シンガポールで開催された先端製造業の大型展示会・会議「インダストリー・トランスフォメーション・アジア・パシフィック(ITAP2023」で、明らかにした。

写真 EVを中心とする実証プラントについて説明する現代自動車イノベーションセンター・シンガポールのパテル副社長(ジェトロ撮影)

EVを中心とする実証プラントについて説明する現代自動車イノベーションセンター・シンガポールのパテル副社長(ジェトロ撮影)

HMGICSはEVを中心とした次世代モビリティーの研究開発(R&D)や実証プラントで、シンガポール西部ジュロン・イノベーション地区(JID)内に2020年10月に着工した(2022年3月29日付地域・分析レポート参照)。2022年末に完成を予定していたが、新型コロナ禍で完成が遅れていた。パテル副社長によると、現代自動車にとって同センターは「初の都市型モビリティ・ハブ」となる。同センターは、ロボティクスや人工知能(AI)、メタバースなどのR&Dだけでなく、セル生産方式(注)や生産の無人化など新たな生産方式の確立に取り組む。また、顧客の嗜好(しこう)に合わせた車の新たな販売モデルの開発も行う。同国で確立した成功モデルは、現代自動車の他の工場へ導入する予定だ。

HMGICSでは正式開業を前に、EV「アイオニック5(IONIQ5)」の生産を2023年6月から開始した。パテル副社長は、2024年から「アイオニック6」の生産を開始すると述べた。同センターの生産能力は最終的に、年間3万台となる。同副社長は「未来のモビリティーは電動、かつ自動で、複数の選択手段があり、パーソナライズ(利用者それぞれの趣向に合わせること)が可能な必要がある」と述べた。HMGICS内には製造施設のほか、消費者向けの見学ツアーも計画されるほか、飲食店も設置するなど、複合的な施設となる予定だ。

ITAPはドイツの総合産業見本市「ハノーバーメッセ」の関連イベントで、シンガポールで開催されるのは今回で6回目。300社以上が出展し、約1万8,000人が入場登録した。

(注)セル生産方式とは、少数の作業者で製品の組み立てを完成まで行う生産方式で、多品種少量生産が可能。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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