スイスはCBAM適用除外なるも、輸出事業者に影響の可能性

(スイス、EU)

ジュネーブ発

2023年10月12日

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、2023年8月31日付地域・分析レポート参照)の移行期間が10月1日から開始された。スイスは、EUとの協定に基づき、EU排出量取引制度(EU ETS)と連結したETSを採用しているため、CBAMの適用除外国となっている。そのため、スイスのETSがEU ETSとの同等性が維持される限り、スイス原産の製品はCBAMの対象とはならない。

また、EUのCBAMにならって、スイス独自のCBAMを導入する義務はない。連邦参事会(内閣)は6月16日、CBAMがスイスに与え得る影響を分析した報告書を基に、貿易、法律、規制面で不確定要素が多く、費用対効果も不透明であるため、当面、スイス独自のCBAMは導入しないことを発表している(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同報告書によると、2022年の貿易統計では、EUのCBAM対象製品(電力を除く)のスイスからの輸出の8割がEU向けで、主に鉄鋼とアルミニウム製品が占めた。スイス原産の製品はCBAM対象外となっているものの、EU関税法典の非特恵原産地規則の理解と対応などが必要になるため、スイスの輸出事業者も影響を受ける可能性があると指摘した。また、報告書では、スイスが独自にCBAMを導入することは、スイスの限られた炭素集約型産業の設備を運転する事業者のみに利益があり、その他の産業には不利益をもたらしうることを指摘。ただし、将来的な独自のCBAMの導入可能性を排除するものではなく、EUによるCBAMに関する中間報告が発表された後の2026年夏に、状況を再検討するとしている。

スイス最大の経済団体「エコノミースイス」は、9月14日にスイス独自のCBAM導入に反対する記事を発表した。導入すれば、排出量の計算や関連書類の準備など、新たに複雑な管理上の対応が求められることから、費用対効果の面でスイスにとって不利益となるとしている。

(深谷薫、パブロ・ダス)

(スイス、EU)

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