中銀、停滞していた企業利益の海外送金を改善

(パキスタン)

カラチ発

2023年10月31日

パキスタンで、滞っていた企業利益の海外送金が改善している。中央銀行(SBP)が10月24日に発表した「対内外国投資にかかる利益、配当の送金統計(産業別)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)第1四半期(7~9月)の対内直接投資(FDI)の利益と配当の海外送金額は1億9,490万ドルで、前年同期の5,020万ドルから3.9倍と大幅な増加となった。9月27日に発表した同統計の国別データによると、日本向けは同年度第1四半期は1,170万ドルで、前年同期の50万ドルから23.4倍となった。7月から外貨準備状況が改善したことで、SBPが送金規制の運用を緩和し始めたとみられる。

パキスタンでは2021/2022年度に経常収支が赤字になり、SBPの外貨準備高が減少、2022年4月時点で104億9,890万ドルと、輸入総額2カ月分に相当する水準まで落ち込んだ。これを受け、SBPは外貨準備を防衛するために輸入規制を導入、同時に利益・配当と同様に、技術援助契約などのロイヤルティーの送金許可も遅らせていた。

ロイヤルティー送金の遅れから保険事故が起き、日本貿易保険(NEXI)は2023年9月11日、パキスタンの保険引き受け方針を変更し、貿易一般保険(ユーザンスが2年未満ならびに2年以上)について、知的財産権などのライセンス契約については、引受を停止すると発表した。

日系企業12社を含む多国籍企業約210社が加盟する海外投資家商工会議所(OICCI)のM. アブダル・アリーム事務局長は2023年1月、「多国籍企業の本国の本社への利益送金は、2022/2023年度初めからペンディングになっている」と語っていた(「ドーン」紙2023年1月24日)。また、2022/2023年度に送金されるはずだったOICCI会員企業の約15億ドルの配当と利益のうち、送金できたのは約20%だけだったと報じられている(「トリビューン」紙2023年7月25日)。

パキスタンは7月13日、IMFのつなぎ融資のスタンドバイクレジット(SBA)総額30億ドルのうち、12億ドルをIMFから受けた(2023年7月6日記事参照)。これを受け、サウジアラビアが20億ドル、アラブ首長国連邦(UAE)も10億ドルの金融支援をパキスタンに行い、その結果、SBPの外貨準備は6月末の44億4,500万ドル(6月末)から翌7月末には81億3,800万ドルとほぼ倍増した。

(山口和紀)

(パキスタン)

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