最低賃金を5年ぶりに実質的に引き上げ

(ミャンマー)

調査部アジア大洋州課

2023年10月16日

ミャンマーの最低賃金委員会は10月5日、最低賃金に対し、日額1,000チャット(約71円、1チャット=約0.071円)の手当を加算することを発表し、実質的に最低賃金を5年ぶりに引き上げることになった。今回の改定で2018年に定められた日額4,800チャット(600チャット/時間×8時間)の最低賃金に対し、1,000チャットの日額手当を加算し、合計5,800チャット(21%増)とする。今回は日額手当での増額であり、最低時給額の変化がないため、残業代などは増額の対象にならない。日給換算の労働者が多いCMP(委託加工型企業)企業では10月1日にさかのぼって適用されることも発表された。

IMFによれば、2022年のミャンマーの消費者物価指数上昇率は前年比16.2%と、2021年の3.6%から大幅に上昇した(注)。それ以前の2018~2020年も5%台から8%台で推移しており、今回の日額手当の加算幅(21%増)では、2018年からの物価上昇による実質賃金の減少分を解消できていない。

2021年の政変以降、ミャンマーの現地通貨安が進行している。2018年当時は1ドル=1,330チャットから1,550チャットで、ドル換算した日額最低賃金は3.1~3.6ドルだった。今回の日額手当が加算された最低賃金を、現在の公定レート(1ドル=2,100チャット)で換算すると2.7ドル、公定レートから大きく乖離する現在の市中レート(1ドル=3,200チャット前後)で換算すると1.8ドルとなり、当時の半額相当だ。ドル建てでの最低賃金の低下は、ミャンマーの輸出産業の競争力を高めているともいえる。

(注)IMFの消費者物価指数は、ミャンマーについて、対象期間を10月から翌9月までの年度で参照している。

(アジア大洋州課)

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