炭素排出量オフセット可能なカーボン・クレジット基準を発表

(シンガポール)

シンガポール発

2023年10月12日

シンガポール環境持続省と同省管轄下の国家環境庁(NEA)は10月4日、炭素税(注)課税対象の排出量をオフセットできる「国際カーボン・クレジット(ICC)フレームワーク」について、適格基準の内容を公表した。

ICCの枠組みは、2022年11月に同国の国会で可決された「カーボンプライシング(炭素の価格付け)改正法」に盛り込まれたもの。これにより、炭素税の対象となる企業が2024年1月から、課税対象となる排出量を、ICCを用いて最大5%オフセットできるようになる。炭素税は現行、温室効果ガス1トン当たり5シンガポール・ドル(約545円、Sドル、1Sドル=約109円)だが、今後、政府は2024~2025年に25Sドル、2026~2027年に45Sドルへと、それぞれ引き上げる予定だ(2022年3月17日記事参照)。

ICCは、パリ協定第6条に基づき設定された。温室ガス排出の削減または除去は2021年1月1日から2030年12月31日までに行われる必要がある。また、(1)二重カウントの防止、(2)法・基準で定めた削減・除去量を上回ること、(3)現実的、正当で、最も控えめな予測に基づく削減・除去の量、(4)透明性のある方法での算出、(5)一時的ではなく、恒久的な削減・除去、(6)法律に基づく削減・除去、(7)削減・削除が別の場所での排出増とならない、と7つの基本原則に順守する必要がある。NEAは2023年内に、オフセットを認めるプロジェクト国のリストと、具体的な手続きを発表する予定だ。

また、環境持続省は同日、カーボン・クレジットに関して政府に提言を行う「カーボン・クレジット国際諮問委員会(IAPCC)」の設置を発表した。ICCの枠組みと同委員会の設置は、「カーボン・クレジットのサービスと取引ハブとするための、最近のイニシアチブの一環」だとしている。

同国はこれまでに、ガーナ、ベトナムのそれぞれとパリ協定第6条に基づくカーボン・クレジット協力に関する実施協定の交渉をほぼ終えている。さらに、シンガポールは、ブータン、カンボジア、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、インドネシア、ケニヤ、モンゴル、モロッコ、パプアニューギニア、ペルー、スリランカとも、同協定の締結に向けた協力で覚書(MOU)を締結した(2023年5月22日記事参照)。

(注)炭素税は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを年間2万5,000トン(tCO2e)以上排出する発電所やごみ処理、製造など約50の事業者が対象。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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