外国人の就労に関する政令を改正、労働許可取得要件は一部緩和

(ベトナム)

ハノイ発

2023年10月13日

ベトナム政府は9月18日、ベトナムで勤務する外国人労働者などに関する政令152号(152/2020/ND-CP)の一部を修正・補足する政令70号(70/2023/ND-CP)を公布、即日発効した。政令70号では、厳しすぎるとして外資企業から改善要望が出ていた労働許可証取得(注1)に係る要件が一部緩和されたものの、外国人労働者が就労予定の職種の告知義務など、新たに追加された条項もある。

特に重要な改正点は次のとおり。

1.専門家・技術者の要件、証明書類(変更)

政令152号は、専門家・技術者の要件の1つとして、当該者の高等教育・専攻分野が、ベトナムでの職務内容と関連性を有することを求めていた(2021年6月29日記事参照)が、政令70号はこの関連性を問わない要件となった。具体的には、専門家の要件は「ベトナムで就労予定の職務に適合した実務経験を3年以上持ち、大卒以上または同等の学歴を有すること」、技術者の要件は「ベトナムで就労予定の職種に適した訓練を1年以上受け、実務経験を3年以上の経験を有すること」などに変更された。

また、労働許可証の更新手続きの際、政令152号では新規申請と同じ書類が必要とされていたが、政令70号では提出書類のうち、専門家・技術者の証明書類は更新前の許可証で代替できることになった。

2.外国人の雇用・労働に係る管轄当局の統一(変更)

外国人労働者の雇用認否の管轄は、政令70号では、労働・傷病兵・社会省(MOLISA)または各地方省・中央直轄市(注2)の労働・傷病兵・社会局(DOLISA)となった。これまでの政令152号では、本管轄がMOLISAまたは省・市の人民委員会とされる一方、労働許可証発給などの管轄がMOLISAまたはDOLISAとされ、管轄当局の不一致が生じていた。また、工業団地・経済区で働く外国人の労働許可証の手続きもDOLISAが管轄することとなった。これまでは、工業団地・経済区の管理に関する政令35号(35/2022/ND-CP)に基づき、本業務は工業団地・経済区管理委員会が管轄していた。

3.外国人労働者使用承認申請前のベトナム人労働者募集公表義務(新規)

政令70号は、2024年1月1日以降、雇用主に対し、外国人労働者の雇用を予定する場合でも、まずはベトナム人向けに当該ポストの求人募集することを義務付けた。雇用主は、MOLISAの公共電子情報ポータルなどで求人を告知し、その募集要項には、職位、職種、職務内容や勤件・待遇などを記載しなければならない。雇用主は、上記告知でベトナム人労働者を採用することができなかった場合に限り、外国人労働者を使用する承認申請を進めることができる。ただし、この公表義務について、本政令の内容だけではまだ不明な点が多い状況だ。

政令70号は即日施行されたため、進出日系企業からは労働許可証発給の運用や解釈などをめぐり、管轄当局でも混乱が生じることを懸念する声がある。

(注1)外国人のベトナムでの就労を認める許可証(ワークパーミット)。ベトナムで働く外国人は、免除対象者を除き、取得が義務付けられている。

(注2)ベトナム政府の管轄を直接受ける都市。ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市、カントー市、ハイフォン市がある。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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