ゼレンスキー・ウクライナ大統領がルーマニア訪問、軍事協力と両国関係格上げに合意

(ルーマニア、ウクライナ、ロシア)

ブカレスト発

2023年10月12日

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は10月10日、ルーマニアの首都ブカレストを訪問し、クラウス・ヨハニス大統領のほか、イオン=マルチェル・チョラク首相や議会代表者らと面談した。ゼレンスキー大統領の当地訪問は、ロシアによるウクライナ侵攻後初めて。両大統領は会談後に共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、両国関係を格上げするため戦略的パートナーシップを締結したことに触れ、協力関係の強化を加速させていくと強調した。

共同記者会見では、ヨハニス大統領が「ロシアからウクライナの港湾設備への攻撃は、ウクライナの穀物輸出と世界の食糧安全保障を脅かすもので、戦争犯罪と言える」と強い表現で非難した。黒海や東方前線(Eastern Flank、注)の抑止力と防衛を強化する努力を継続し、ウクライナ産穀物を国際市場に輸出するため、ルーマニア国内の港湾整備を進めているとした(2023年9月12日記事参照)。また、ウクライナの復興では、隣国である自国の物流や輸送インフラが他国の開発パートナーにとってもハブとして利用され得ることから、ルーマニアの関与が重要だと述べた。ウクライナとモルドバのEU加盟実現に向けた支援にも力を尽くすとした。

ゼレンスキー大統領は同日、ルーマニアに新設された操縦士訓練センターで、ウクライナ空軍へのF16戦闘機の訓練を提供するとの重要な決定がなされたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。砲兵や空軍部隊に関する協議でも進展があったとし、ロシアはウクライナの港湾整備にミサイルや自爆型無人機シャヘドを発射しており、空軍部隊の強化は世界の食糧安全保障上からも重要だと強調した。加えて、国土全体またオデーサ域内での空軍部隊の強化に向けて、複数のパートナー諸国と連携を進めており、ヨハニス大統領とも港湾だけでなく、ウクライナ、モルドバ、ルーマニアの地域全体を共同で防衛する可能性について協議したと明らかにした。ウクライナからモルドバを抜けてルーマニアに通じる「穀物回廊」も間もなく開通する見込みで、近隣諸国との協力によって得られる成果がどれほど大きいかを示す好例だとした。

ルーマニア国防省は9月6日、ロシアが黒海にかわる農産物の輸出代替ルートの拠点であるウクライナ南部オデーサ州のドナウ川沿いを連続して攻撃しており、対岸に位置するルーマニアの領土内でも、小型無人機(ドローン)の破片が発見されたとしている。

(注)NATOが定義するバルト3国、ポーランド、ルーマニアなど、ロシアやウクライナと国境を接する諸国。

(高崎早和香)

(ルーマニア、ウクライナ、ロシア)

ビジネス短信 c40aef080c4ca202