大連市で日本語人材の育成と確保に関するフォーラムを開催

(中国、日本)

大連発

2023年10月30日

中国の大連市で10月22日、同市の日本語人材の育成と確保をテーマとするフォーラムが開催された。主催者は在瀋陽日本総領事館在大連領事事務所で、ジェトロ、大連日本商工会および中国日本語教学研究会大連分会が共催した。2023年で5回目となる同フォーラムには、大連市政府、日系企業、日本語教育関係者など計110人が参加した。

同フォーラムでは、講演とパネルディスカッションが行われた。講演では、中国日本語教学研究会大連分会の杜鳳剛副会長が「日本語教育の現状、日本語人材育成の取り組み」について、野村総研(大連)科技の河口千代孝総経理が「日本語人材確保状況と、企業が求める人材、大学との交流」について、国際交流基金北京日本文化センターの野田昭彦所長が「中国全土における日本語教育の支援」についてそれぞれ説明した。

杜副会長の講演の中では、在瀋陽日本総領事館在大連領事事務所が7月に実施した、大連市の日系企業や同市で日本語人材を育成する大学を対象に行った「日本語人材育成フォーラムアンケート結果」(以下、調査結果、注)にも触れた。調査結果によると、「日本語能力を重視する日本語人材がほとんど確保できていない」と回答した企業の割合は全体の1割未満だったのに対し、日本語能力プラスアルファの能力を有する複合型人材が確保できていないとした割合は約6割に及んだと説明。大学への要望として、「日本企業文化やビジネスマナー」「日本語プラスアルファの知識」「実体験型授業」の拡充を希望する声が多く聞かれたと強調した。

パネルディスカッションでは、講演者の杜副会長、河口総経理のほか、ジェトロの重岡純大連事務所長や大連外国語大学の卒業生(日系企業勤務)が登壇し、大連市で日本語人材を育成する意義、課題、今後の施策提言についてディスカッションした。パネリストが提示した共通課題として、「現在は日本語能力を有するだけでなく、各種専門知識も有する複合型日本語人材が求められており、今後はより企業のニーズに合う人材の育成が重要」との指摘があった。前述の調査結果では、大学側の日系企業との交流ニーズが高いとの結果も出ており、今後は大学と日系企業をつなげる枠組みの構築が求められている。

参加者からは、「企業と大学間の連携方法のあり方など示唆に富む内容が多く、非常に有意義だった」(日系企業勤務)、「初めて大連日本語人材の現状と課題を知った。今後の日本語教育の現場で生かしたい」(大学勤務)などの声が寄せられた。

(注)アンケートの実施期間は2023年7月10~23日、有効回答数は日系企業103社、大学19校となる。

(呉冬梅)

(中国、日本)

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