米ケンタッキー州知事選やバージニア州議会選など各地で民主党躍進

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月09日

米国ケンタッキー州で11月7日に知事選挙が行われた。「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版(米東部時間8日午後3時6分時点、開票率95%以上)によると、民主党現職のアンディ・ベシア知事が、共和党候補の同州司法長官のダニエル・キャメロン氏に対し、得票率52.5%対47.5%で2期目の当選が確実となった。同州では1971年から2003年まで民主党知事が続いた後、民主、共和の両党から交互に知事が選出されていた。

同州では、州議会の上下両院とも共和党が過半数を占め、連邦議会も上院2議席、下院6議席中5議席を共和党議員が占める「レッドステート(赤い州)」だ。同州でのジョー・バイデン大統領(民主党)の最近の支持率は全国平均を下回っており(注1)、知事選立候補に当たってドナルド・トランプ前大統領の支持を受けたキャメロン氏は、ベシア知事とバイデン大統領のつながりを強調することで票の獲得を狙った。一方で、ベシア知事は人工妊娠中絶や、新型コロナウイルスのパンデミックや竜巻などからの復興、地域経済の活性化、インフラプロジェクトなど、国政とは切り離した州レベルの問題や、現職としての実績に焦点を当てたキャンペーンで票を集めた。

同日に行われたバージニア州議会の上下両院の改選では、民主党が上院40議席中21議席を獲得、共和党が現在過半数を占める下院でも、民主党が100議席中51議席を獲得して、いずれも過半数を制する結果となった。同州での民主党の躍進は、次期大統領選への立候補の可能性が報じられている同州のグレン・ヤンキン知事(共和党)にとって「大きな挫折」になると報じられている(「ワシントン・ポスト」電子版11月8日)。このほか、ニュージャージー州議会の改選でも、民主党が両院ともに過半数を維持した。さらに、ロードアイランド州で実施された連邦議会下院の補欠選挙では、民主党のガブリエル・アモ氏が得票率64.9%で当選。同州初の黒人下院議員として注目されている。

一連の地方選挙では、人工妊娠中絶の是非が争点の1つとなった。ケンタッキー州では、2022年6月に連邦最高裁判所が「ロー対ウェイド判決」(2022年6月27日記事参照)を破棄した翌月に、母体に危険がある場合以外の人工妊娠中絶を禁止する州法が発効したが、レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠については明文化されていない。ベシア知事はこれを例外措置として認める立場をとる一方で、キャメロン氏は「裁判所が法律の変更を命じるなら、そのような例外を支持する」としながらも、「最終的には私はプロライフ(注2)支持だ」と述べていた。バージニア州では、妊娠から26週と6日までの人工妊娠中絶を州法で認めているが、ヤンキン知事がこれを15週に短縮するよう求めていることから、現行州法の維持を求める票が民主党に集まったとみられている。

(注1)調査機関のファイブ・サーティーエイトによると、2023年8月30日時点の全米でのバイデン大統領支持率は40.9%、一方で、国勢調査と人口動態を専門に扱う独立機関のワールド・ポピュレーション・レビュー(WPR)によると、同時期のケンタッキー州での支持率は31%にとどまった。

(注2)人工妊娠中絶の合法化に反対する立場

(大原典子)

(米国)

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