第3次サンチェス内閣が発足、独立問題解決に向けた布陣

(スペイン)

マドリード発

2023年11月24日

スペインのペドロ・サンチェス首相の第3次内閣が11月21日に発足した。中道左派・社会労働党(PSOE)と急進左派スマール(SUMAR)による連立政権で、首相を含めた閣僚22人のうち女性は12人と、これまで同様、女性過半数の内閣となった(添付資料表参照)。

サンチェス首相は、政権の優先課題として、(1)グリーン移行とデジタル変革を通じた経済・産業の転換と完全雇用の達成、(2)福祉強化と生活費高騰下での購買力向上、(3)若年層の住宅アクセス向上、(4)気候変動対応を通じた産業変革と地域格差是正、(5)世界トップレベルのジェンダー平等、(6)地域格差是正を通じた内陸部の人口過疎化対策、(7)(カタルーニャとの)国内関係の改善と共存への取り組み、(8)欧州におけるスペインのリーダーシップ強化を挙げた。

他方で、サンチェス政権は引き続き少数与党政権であり、続投のカギとなったカタルーニャ独立派への恩赦法案は右派から強い反発を受けている(2023年11月17日記事参照)。また、上院では最大野党の中道右派・民衆党(PP)が過半数を握るねじれ状態にあるほか、2023年5月の地方選挙で自治州政権の多くがPP政権に交代しており(2023年5月31日記事参照)、政権運営は容易ではないとみられる。同首相はこうした現状を受け、「今後4年間、国の安定をもたらす政権だ。新政権の閣僚には、合意形成や説明責任を果たせる政治力の高さを重視した」と強調した。

経済省が通商・ビジネス振興を吸収

新内閣発足に伴う省庁改編では、副首相ポストが従来の3つから4つ(経済相、労働相、環境相に加え、財務相)に増えたほか、首相府・国会関係相が法務相も兼任し、重要政策における官邸との連携を強化する。副首相4人(すべて女性)、外務、国防、内務相などの主要閣僚は留任した。経済関係の主な省庁については、ナディア・カルビーニョ第1副首相が兼任する経済相ポストが従来の経済・デジタル変革省から経済・商業・企業省へと改編。従来の産業省から通商・ビジネス関係を吸収した一方、デジタル行政は新設のデジタル変革省が担う。また、産業・観光相には、ジョルディ・エレウ元バルセロナ市長、運輸・持続可能モビリティ相にはオスカル・プエンテ前バリャドリード市長が就任した。

11月22日には初閣議が開かれ、2024年の国家予算法の策定作業の開始が決定された。予算法の成立までは通常6カ月近くかかるため、年明けは延長予算が適用されるとみられる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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