2度目の新憲法草案が完成、12月17日に国民投票実施へ

(チリ)

サンティアゴ発

2023年11月15日

チリの新憲法評議会は11月7日、5カ月にわたる議論を経て完成した新憲法の草案をガブリエル・ボリッチ大統領に提出した。これにより、草案承認の是非を問う国民投票が12月17日に実施される。

現行憲法は1981年の軍事政権下で発効した。改憲は幾度となく行われてきたものの、国家の義務や先住民族の認知など、記載内容が不十分という声が上がっていた。この流れを受けて2021年から新憲法制定に着手したが、急進的な内容に国民の支持は得られず、2022年9月の国民投票で否決された(2022年9月6日記事参照)。その後、2度目となる新憲法制定プロセスを進め、前回の失敗を教訓に新たな憲法草案が作成された。

今回完成した草案には、現行憲法にはない環境保護や先住民族の認知、住宅へのアクセス権利の促進、労働者の基本的権利の尊重などを盛り込んでいる。加えて、死刑の禁止や、不法移民は可能な限り短期間で国外追放することを記載している。ほかにも、胎児の命を保護するという文言があり、保守的な内容が盛り込まれた。チリでは3つの理由(注)の場合にのみ中絶を合法化しているが、新憲法が承認された場合、中絶が完全に違法となる可能性があると有識者は指摘している。

事前の世論調査で反対が多数占める

民間調査会社カデムが行った直近の世論調査によると、新憲法草案承認に反対と回答した人の割合は賛成を15ポイント上回った(添付資料表1参照)。アクティバ・リサーチの世論調査でも、反対(36.7%)が賛成(12.3%)を大幅に上回っている(添付資料表2参照)。また、アクティバ・リサーチによる新憲法制定プロセスに対する信頼度調査では、「とても信頼している・信頼している」との回答はわずか11%で、「少し信頼している・何も信頼していない」が67.7%を占めた。

(注)母体の命が危険にさらされている場合、胎児が子宮外での生命維持が不可能と診断された場合、性的暴行による妊娠の場合。

(岡戸美澪)

(チリ)

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