中東では2050年までに石油生産26%増、天然ガス生産54%増、再エネ発電は23倍の見通し

(中東、オマーン、アラブ首長国連邦)

調査部中東アフリカ課

2023年11月08日

国際エネルギー機関(IEA)は10月24日、2023年版の「世界エネルギー見通し」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書では、世界全体では石炭、石油、天然ガスの需要が2030年までにピークを迎えるとの分析を示した(2023年10月26日記事参照)。

一方で、中東(注)においては、石油・天然ガスの生産拡大が見込まれる。既に公表や実施がされている政策に限定して推計したSTEPSシナリオ(Stated Policies Scenario)において、中東での石油生産は、2050年に日量3,930万バレルとなるという。これは2022年時点の日量3,100万バレルと比べて26%増加するとの予測だ。アジア向けの石油輸出が増える見通しであり、世界の石油の海上輸送において、現在、中東からアジア向けのシェアは約4割だが、2050年には約5割まで拡大するという。また、中東での天然ガスの年間生産は、2050年に、2022年と比べて54%増の1兆440億立方メートルとなると予測している。

ネットゼロに向け、再エネ発電も増加

同報告書によると、石油・天然ガスの利用増などにより、2050年までに中東での年間の二酸化炭素(CO2)排出量は29%増加するという。一方で、アラブ首長国連邦(UAE)とオマーンは2050年までのネットゼロ達成、サウジアラビア、バーレーン、クウェートは2060年までのネットゼロ達成を目指しており、再生可能エネルギーの利用も増えている。

中東での再エネ発電は、2022年に45テラワット時(TWh)のところ、2050年には約23倍の1,041TWhとなるという。風力発電は2022年の4TWhから2050年には約60倍の232TWh、太陽光発電も2022年の17TWhから2050年には約36倍の643TWhと予測している。2022年時点の発電源の構成比をみると、石油・天然ガスの割合が最も大きく94%となっているが、21世紀半ばには約60%まで減少するという。2050年までにクリーンエネルギーに関する投資は、現在の約4倍の900億ドルに達する見通しだ。

また、同報告書では、中東において、2030年までにエネルギー需要が約15%拡大し、特に海水淡水化に関するエネルギー需要は2倍になるとの予測も示す。域内では砂漠地帯も広いため、現在、世界の海水淡水化プラントは約2万1,000基あるが、約半数が中東に位置している。今後、人口拡大による生活用の淡水の需要増加とあわせて、再エネにより水を電気分解して水素を取り出すグリーン水素の生産のための淡水の需要も増加する見込みだ。なお、オマーンでは、2030年までにグリーン水素を年間100万トン生産し、2040年までに年間400万トン生産することを目指しており、中東では化石燃料に代替するエネルギー候補として水素戦略を立案する国もある。

(注)同報告書では、バーレーン、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメンの12カ国を中東に含む。

(井澤壌士)

(中東、オマーン、アラブ首長国連邦)

ビジネス短信 e742e7015283d3a3