世界銀行、2023年のラオスの経済成長率を3.7%と予測

(ラオス)

ビエンチャン発

2023年12月12日

世界銀行は11月30日、ラオスの最新の経済分析レポート「ラオ・エコノミックモニター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。現地通貨キープ安やインフレ、労働者不足、天候不順などが原因で、2023年のGDP経済成長率を前回レポート(2023年5月31日記事参照)の3.9%から3.7%へ、0.2ポイント引き下げた。

2023年のラオス経済は、1~9月の外国人観光客数が前年同期比3倍となり、新型コロナウイルス感染拡大前の水準の4分の3まで回復したことや、鉄道輸送による貿易量の大幅増やドライポートの運営などが成長を牽引した。一方、通貨安と高インフレ(注1)は事業コストを押し上げ、消費縮小をもたらしたと指摘した。

産業別に見ると、鉱業では銅、鉄鉱石、カリウムの生産が増加したが、電力生産は降雨量の減少により発電量・輸出量ともに減少した。縫製業やパルプ、電子部品などの製造業では、原材料コストの上昇や労働力不足、外需減退の影響を受け、生産は低迷した。特に高インフレは平均賃金が3倍高いタイへの出稼ぎを加速させた。10月時点でタイに出稼ぎする正規ラオス人労働者は22万人を超え、非正規を合わせると30万~40万人に達すると推定され、ラオスの非農業労働者の3分の1(注2)を超える可能性があるとした。

財政再建では、観光業や鉱業が好調だったことに加え、歳出引き締めとインフレや通貨安に支えられて税収が増加したことで歳入が増加し、2023年上半期は2.8%の黒字に転じた。一方、公共・公的保証債務(注3)は2022年に139億ドル(GDP比112%)に達したと推計されており、依然として危機的な水準にあるとした。中国への債務返済猶予累積額は2023年末には20億ドルとなる可能性が高いと指摘した。

今後のGDP成長率の見通しについて、数年間は平均4.2%程度の緩やかな回復が続くと予測した。債務は、対外債務返済額は2024~2027年に年平均13億ドルで、主要債権国との債務再編についての包括的な合意がない限り、財政を引き続き圧迫し、債務返済額が歳入の100%を超える高水準にとどまる可能性を指摘している。インフレ率は2024年も15.2%と、2桁台が続くと予想した。このような中、付加価値税や物品税などの増税や、法人税免除などの投資優遇税制を見直す野心的な歳入改革が必要だが、同時に、相当な緩和をもたらす債務救済が必要と指摘している。

(注1)2023年11月のインフレ率は前年同月比25.8%。同レポートは、2023年平均は31.4%と予測している。通貨キープの相場(2023年1~10月平均)は対ドルで前年同期比35%、対タイ・バーツで30%下落した。

(注2)ラオス統計センターの2022年第3回労働力調査によると、就業者数は248万人、うち非農業労働者は43.1%(107万人)。

(注3)英語でPublic and Publicly Guaranteed(PPG)Debtという。政府や公的機関が返済を保証した債務。

(山田健一郎)

(ラオス)

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