自動運転による安全な輸送サービスに関するガイドライン発表

(中国)

北京発

2023年12月12日

中国交通運輸部は12月5日、「自動運転車両による安全輸送サービスガイドライン(試行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。

ガイドラインでは、自動運転の利用シーンや、自動運転を用いる輸送事業者、自動運転機能を搭載した輸送用車両、人員配置、安全の確保などについて具体的に規定しており、自動運転車両を用いた輸送事業を営むための基本的要件を明確化した。同ガイドラインの草案に対して、2022年8月8日から9月7日までパブリックコメントを募集していた。

同ガイドラインは、自動運転車両(条件付き自動運転車両、高度自動運転車両、完全自動運転車両を含む)を用いて、公道で都市公共バス・タクシーによる旅客輸送、道路旅客・貨物輸送事業に従事する者に適用されるとした(注1)。

また、自動運転車両を用いた輸送事業は指定されたエリアで行なうものとし、道路交通安全評価に合格しなければならないとしたほか、道路旅客輸送事業での自動運転車両の利用には慎重を期すべきこと、 危険物の道路輸送業務については自動運転車両の使用を禁止することなどを定めている。

さらに、自動運転車両を用いる輸送事業者は、市場主体登記を行う必要があるとした上で、事業内容に応じて、損害賠償責任保険に加入することや、関連業務の営業許可の取得など資格要件を満たすことなどを求めた。事業内容に応じて運転手あるいは安全担当者を配置することも義務付けた(注2)。

このほか、自動運転車両は運行状況を記録、保存、送信する機能を備える必要があり、事業者や運行地の関連所管部門に運行状況の関連情報をリアルタイムで送信しなければならないと規定した。事故が発生または自動運転機能が停止した場合には、少なくとも事故の90 秒前の運行状況を自動的に記録、保存しなければならないとした。

北京市で国内初となる自動運転の商業化試験が開始されて(2022年7月29日記事参照)以降、重慶市、湖北省武漢市、広東省深セン市など10以上の都市で自動運転の商業化試験が展開されている。交通運輸部は10月26日の記者会見で、100社以上の企業が1,000台以上の自動運転車両を投入しており、自動運転の応用による規模の効果が表れつつあるとした。

(注1)自動運転車両の分類については、中国の国家標準「自動車運転自動化分類」で、レベルゼロからレベル5まで6段階で定義している。今回のガイドラインでは、同分類のレベル3(条件付き自動運転)、レベル4(高度自動運転)、レベル5(完全自動運転)の自動運転車両が対象となっている。

(注2)都市部の公共バス、道路旅客輸送事業に利用される自動運転車両には1人の運転手または安全担当者を、道路貨物輸送事業に利用される自動運転車両には原則として安全担当者を、タクシーサービスを提供する条件付き自動運転車両と高度自動運転車両には1人の安全担当者を、完全自動運転車両には所在地政府の同意を得た上で遠隔で確認を行う安全担当者を配置しなければならないとした。

(張敏)

(中国)

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