中東進出日系企業調査、営業利益の黒字割合は調査開始以来最高

(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、カタール、ヨルダン、クウェート、バーレーン、オマーン、日本)

調査部中東アフリカ課

2023年12月28日

ジェトロは2023年9月4~27日に、中東地域10カ国に進出する日系企業260社を対象(10カ国、228社から有効回答)に、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施し、12月21日付で調査レポート「2023年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」として公表した。

2023年に営業利益の黒字を見込む企業は、2014年の調査開始以来、最も高い68.8%となり、世界平均の63.4%を上回った。収支均衡との回答は前年の33.6%から21.7%へ11.9ポイント下がり、赤字を見込む回答も前年の9.7%から0.1ポイント低下の9.6%となった。前年に均衡、赤字と回答した企業が黒字に転換したとみられる。特にアラブ首長国連邦(UAE)とトルコで黒字を見込む割合が高く、両国とも75%以上が黒字と回答している。

2023年の営業利益が改善する理由として「現地市場での需要増加」を挙げる企業が半数を超え、「現地市場での販売体制強化」とする回答も4割を超えた。販売体制の強化などの企業努力によって現地市場の需要の高まりを捉えようとする日本企業の姿が浮かび上がる。また、2023年の営業利益は悪化するとの回答では、その理由として「為替変動」(40.9%)、「原材料・部品調達コストの上昇」(36.4%)が多かった。

今後1~2年の事業展開については、「現状維持」が47.1%で最大となり「拡大」の44.9%を上回った。その一方で、UAEとイスラエル(注)では半数以上が拡大と回答している。「拡大」とした企業では、理由について「現地市場ニーズの拡大」とする割合が最も高く、58.8%だった。今後の事業展開で拡大する機能について聞いたところ、「販売」が72.3%と圧倒的に多かった。一方で、現地調調達比率については、中東全体で25.2%となり、世界平均の46.4%を大きく下回った。

自社グループの中東の売上高シェアを聞いたところ、中東全体では今後2~3年後、今後5年後以降とも「拡大」とした回答は4割を超えた。特にトルコでは今後5年後以降のシェアが拡大するとの回答は61.3%と、調査対象国の中で最も多かった。

人材不足の課題に関する質問では、「課題がある」との回答は中東全体で37.8%で、世界平均の51.5%を下回っている。一方で、インフレが収まっていないトルコや、サウジアラビア人雇用促進策(サウダイゼーション)を掲げるサウジアラビアでは、「人材不足の課題に直面している」との回答が多く、半数を超えている。職種別では法務、経理、エンジニアなどの専門職について、「とても深刻」と「やや深刻」を合わせて60.0%、次いでマネジャーなどの一般管理職が54.1%と多かった。現地社員の今期の基本給ベースアップ率は中東全体の平均では18.0%だったが、インフレ率の高いトルコでは平均が70.2%と高いベースアップ率が目立った。

(注)本調査のアンケートは2023年9月に実施しており、2023年10月7日に発生したイスラエルとハマスの武力衝突以前の状況を反映している。

(松村亮)

(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、イスラエル、イラン、カタール、ヨルダン、クウェート、バーレーン、オマーン、日本)

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