中国によるECFAの一部品目関税引き下げ措置停止に対し、台湾経済部は影響限定的と表明

(台湾、中国)

調査部中国北アジア課

2023年12月25日

台湾の経済部は12月22日、中国財政部が海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づいて台湾に対して行っている関税引き下げ措置を石油化学品12品目について停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたことに対し(2023年12月25日記事参照)、台湾の総統選挙を控えたタイミングの経済貿易の政治化で、大変遺憾としつつ、影響は限定的と表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

経済部によると、影響が限定的な理由は次の3点。

第1に、対象品目の2023年1~11月の対中輸出は18億ドルで、台湾の対中輸出全体に占める割合は1.3%にすぎない。そのうち大多数の品目(約16億ドル相当)の税率はECFA適用時の0%から1%もしくは2%へ変更されるのみで、多くは台湾企業が中国工場で生産工程の上流で調整用に使用するものだ。

第2に、2023年1月~11月の台湾の輸出に占める対中輸出の割合は、過去の約4割から約35%に低下しており、これは台湾の近年来の産業発展とグローバル化の成果で、中国の一方的な行為による台湾の輸出への影響を限定的なものにしている。輸出品目別では5割以上を半導体製品が占め、このうち9割近くは組み立て加工後に世界に中間財として輸出される。

第3に、2023年の台湾の石油化学産業の対中輸出は前年比3割以上減少している。中国の石油化学企業が大幅に増産している中、中国経済の回復スピードが遅いため、中国は世界の石油化学産業にとってレッドオーシャンとなっている。台湾企業は既にグローバル化し、かつ差別化できる商品を展開している。

経済部は、ECFAの優遇税制が取り消された後はWTOの最恵国税率となり、輸出ができないわけではないと強調しつつ、関連企業と連絡を取りながら、状況に応じて補助や指導を行っていくとした。

台湾区石油化学同業公会の理事長を務める台塑石化の曹明総経理は今回の措置に対し、「2022年の台湾石化産業の対中輸出額は前年比31.9%減の約62億4,000万ドルで、うちECFAの優遇対象は17億ドル程度だ。金額は過去に比べて減少しているが、それでもなお台湾の石油化学工業の輸出先のうち約4割は中国と香港が占めている。今回の関税引き下げ措置取り消しは最後の1回ではなく、中国は続けて関連措置をとる可能性が高い。台湾当局は、台湾の関連企業に対する影響を注視し、積極的に解決を図ってほしい」とコメントした(「工商時報」12月22日)。

(江田真由美)

(台湾、中国)

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