中国商務部、台湾の輸入制限措置を「貿易障壁」と認定

(中国、台湾)

調査部中国北アジア課

2023年12月19日

中国商務部は12月15日、台湾の中国に対する貿易制限措置について貿易障壁調査を行った結果、台湾が実施している措置は「貿易障壁」と認定した(注1)。

商務部は4月12日、中国の業界団体の申請を受け、「対外貿易法」および「対外貿易障壁調査規則」の規定に基づき、台湾の中国に対する貿易制限措置について貿易障壁調査を行うと発表し、10月9日には、調査期限を2024年1月12日まで延長すると発表していた(注2)。

なお、対外貿易障壁調査規則第33条では、貿易障壁調査の対象となる措置や慣行が同規則第3条に定義する「貿易障壁」に該当すると認定された場合、商務部は状況に応じて2者協議の実施やマルチの紛争解決メカニズムの開始、その他適当な措置を取ることができるとしているが、今回の認定のタイミングでは、具体的な措置については言及されていない。

商務部は調査によって明らかになった事項として、次の5点を挙げた。

  1. 台湾は関係法規により中国大陸産の製品に対し輸入禁止制度を実施している。
  2. 台湾が輸入禁止としている中国大陸産の製品の数量は膨大で、かつ近年その範囲が拡大傾向にある。
  3. 台湾が中国大陸産の製品を輸入禁止とする具体的なプロセスが公開されておらず不透明だ。また、輸入禁止により影響を受ける企業が、そのプロセスに参与する機会がなく、救済措置もない。
  4. WTO事務局は台湾の関連措置に対し、注視すると複数回述べているが、台湾は措置の改善をしておらず、WTOへの通報義務も履行していない。
  5. 海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)により、中国は、台湾に対し優遇措置を長期にわたり実施しているが、台湾は中国に対する貿易制限を実質的に減少させていない。

さらに、商務部は「貿易障壁」に該当すると認定した根拠について、台湾が「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」およびECFAで定められた関連規定を順守していないことのほか、調査の結果、中国大陸の農産物輸出企業や工業製品輸出企業が、台湾側の貿易制限措置により、台湾への輸出ができないために潜在的な損失を被っていると判明したことなどを挙げた。

(注1)「貿易障壁」の定義については、「対外貿易障壁調査規則」第3条で定められており、ある国・地域政府が実施または支援している措置や慣行について、「当該国・地域と中国が締結した、または参加している経済貿易条約または協定に違反している」「当該国・地域の市場または第三国・地域の市場への中国の製品・サービスの参入を妨害・制限する、またはその恐れがあること」などの状況が存在する場合、「貿易障壁」と見なすとしている(2023年4月13日記事参照)。詳細は、ジェトロの調査レポート「中国の『貿易障壁調査』についてPDFファイル(449KB)」を参照。

(注2)台湾の総統選挙投開票日は、延長された調査期限の翌日の2024年1月13日に予定されている。

(藤原智生)

(中国、台湾)

ビジネス短信 5c418a71130ae4ff