ADB、南アジア地域の2023年経済成長予測を5.7%に上方修正

(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)

調査部アジア大洋州課

2023年12月15日

アジア開発銀行(ADB)は12月13日、「アジア経済見通し(ADO)2023年12月版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、南アジア地域(注)の2023年GDP成長率の予測を5.7%と発表した。予想を上回るインドの強靭(きょうじん)な経済成長を受け、前回公表値(2023年10月3日記事参照)から0.3ポイントの上方修正となった。2024年の成長率については6.0%との予測を維持した。

インドのGDPが7~9月期に製造業や建設業などで2桁成長を記録したことを背景に、2023年の経済成長率は6.7%と見通し、前回予測から0.4ポイント上方修正した。2023/2024年度(2023年4月~2024年3月)の経済の全体像としては、農業が予想より緩やかな成長となる一方、これを産業の強靭な伸びが相殺して余りあると見通した。また、中央政府や州政府による公共投資の増加に伴って資本財の投資が堅調に成長し、民間消費支出や輸出の伸び悩みを補完するかたちだ。2024年度(2024年4月~2025年3月)の見通しについては、前回予測を据え置き6.7%としている。

バングラデシュ経済については、エネルギー供給不足やインフレ率高騰、主要輸出市場での成長減速により輸出や製造業の成長率を引き下げている。2024年1月に予定される大統領選挙の不透明感が後退すると上振れする可能性はあるものの、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)のGDP成長率は下方修正した(前回予測では6.5%、今回発表では具体数値記載なし)。

スリランカの2023年のGDPは前回予測のマイナス3.0%成長を据え置き、不況が継続する見通しのほか、パキスタンについても全体的な回復はインフレ高騰などにより道半ばとした。

南アジア地域の2023年のインフレ率予測は8.6%を維持したが、2024年見通しについては、6.7%(前回9月は6.6%)に上方修正した。バングラデシュで、食品価格の高騰を背景に、2023年7月~10月期の月次インフレ率が約2倍となったことや、ネパールで、国際石油価格の高騰を背景として2024年見通しが上昇したことを背景に、南アジア地域全体の2024年見通しを上方修正したとしている。

(注)南アジア地域:アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ。

(深津佑野)

(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)

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