フランスで医薬品投資が拡大

(フランス)

パリ発

2023年12月01日

デンマークの製薬会社ノボ・ノルディスクは11月24日、フランス中部サントル=バル・ド・ロワール地域圏シャルトル市にある自社工場に21億ユーロを投資し、糖尿病治療薬などの生産能力を拡大すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2026年から2028年にかけて段階的に製造設備を拡張する。同工場の従業員数は現在1,600人だが、この設備投資によって最終的に500人以上を新たに雇用する見込み。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は同日、ノボ・ノルディスクのシャルトル工場を訪問し、スピーチを行った。マクロン大統領は、今回の投資決定はフランス政府が進める製造業の自律性(主権)確保、輸出拡大、雇用創出などの取り組みに大きく貢献するものだと歓迎した。

フランスの医薬品部門では、米国製薬大手ファイザーが、2022年に5年間で5億2,000万ユーロの投資を行うと発表した後、2023年5月には腫瘍および希少疾患に係わる臨床試験の実施やデジタル医療支援に5億ユーロの追加投資を決めるなど、大型投資が相次ぐ。

マクロン大統領は、2021年に発表した国家投資計画「フランス2030」の中で、2030年までに医薬品分野において自律性を持った、イノベーティブな欧州のリーダーとなることを目標に掲げ、医薬品の開発と国内生産の増強に75億ユーロを投資する計画を打ち出している。

特に感染症などの危機対応医薬品、バイオ医薬品、デジタル医療、革新的医療機器の4つの分野でイノベーションと国内生産を加速させる方針。バイオ医薬品については、2030年までに、がんや慢性疾患などの治療薬を中心に少なくとも20品目の創薬を目指し(注)、研究開発や人材育成支援に10億ユーロの予算を充てた。

マクロン大統領は2023年6月、足元で供給不足が深刻化する風邪薬などの医薬品についても、「フランス2030」の枠内で国内生産回帰・増強を支援する計画を発表した。必要不可欠な医薬品をリストアップするともに、英国グラクソ・スミスクライン(GSK)など製薬会社8社による国内生産回帰(増強)プロジェクトへの支援を決めた。パラセタモールやアモキシリンなど、必要不可欠な医薬品の安定供給確保を目指す。

(注)フランス高等教育・研究省発表資料(2022年1月7日付)によれば、2020年にフランスで生産されたバイオ医薬品は5品目で、ドイツの21品目、イタリアの12品目に比べ後れをとっている。

(山崎あき)

(フランス)

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