米上院有力議員ら、電子商取引に関するWTO交渉への支持をバイデン大統領に要請

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月04日

米国連邦議会上院のロン・ワイデン財政委員長(民主党、オレゴン州)ら32人の上院議員は11月30日、ジョー・バイデン大統領に対し、米国通商代表部(USTR)の電子商取引(EC)に関するWTO交渉の方針を見直すよう求める書簡を送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。書簡には、財政委員会からマイク・クレイポー少数党筆頭理事(共和党、アイダホ州)のほか、14人の議員が署名しており、超党派の内容となっている。

USTRは10月25日、ECに関する貿易関連ルールを交渉するWTOの共同声明イニシアチブ(JSI)の参加国が開いた会合で、越境データフロー、データローカライゼーションの要求禁止、ソースコードの開示要求禁止に関わる提案への支持を取り下げると発表していた(2023年10月30日記事参照)。デジタル貿易へのアプローチを巡って、国内で議論する「政策的余地」を確保するためというのが理由だ。この発表の直後に、ワイデン、クレイポー両議員らはUSTRの決定を批判する声明を出しており、今回の書簡で直接、バイデン大統領に再考を促したかたちだ。

ワイデン議員らは書簡で、JSIにおける提案は「国境を越える情報の流通を促進し、米国の輸出と価値観を支えるオープンなインターネット」という、これまで米国が超党派で支持してきた原則を反映していると指摘した。自由なデータ流通は、製造業から農業までほぼ全ての産業にとって必要で、国境を越えるデータ流通の正当な目的のない制限は企業の国外ビジネスを妨げると警告した。一方、デジタル分野の規制にも言及し、WTOにおけるルール交渉から手を引かずとも、消費者保護やプライバシーの促進、競争政策について最善の方法を議論することができると主張した。

ワイデン議員らは、USTRが提案を撤回しただけで、代替となる政策案を提示していないことも問題視した。政策を転換する前に議会や他省庁との協議を通じて、デジタル貿易に関するコンセンサスを得るよう要請した。バイデン政権はJSIの提案への支持を撤回した後、デジタル貿易に関して具体的な方針を示していない。USTRのキャサリン・タイ代表は11月16日、記者団に「現在、われわれは(特定の)立場を取っていない」と述べ、新たな方針を策定中と説明している(政治専門紙「ポリティコ」11月17日)。

(甲斐野裕之)

(米国)

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