GDP成長率予測、2024年は1.1%、2025年は1.7%の見通し

(スイス)

ジュネーブ発

2023年12月22日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は12月13日、スイス経済見通しを発表し、2024年通年の実質GDP成長率予測(スポーツイベント調整後:注)を1.1%、2025年を1.7%とした(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、添付資料表参照)。

2023年第3四半期(7~9月)のスイス経済は、製造部門が停滞するなか、サービス部門に牽引されて緩やかに伸びた。現在の経済指標の多くは平均値を下回っていることから、今後も緩やかな成長が見込まれる。一方、最近まで世界経済は非常に複雑な状況を呈していた。第3四半期の米国経済の成長は予測を上回り、中国も大幅な成長を記録したが、対照的に、ユーロ圏、ドイツでは特に工業部門で低迷が続いた。世界的に需要が弱まり、金融引き締め政策により景気が減速する見通しだ。しかし、現時点では世界的な景気後退に至る見通しはなく、労働市場は引き続き良好で、インフレも世界全体で低下している。

こうした状況を背景に、SECOはスイスのGDP成長率予測を2023年は1.3%とし、前回9月予測から据え置き、2024年は1.1%と、前回予測から0.1ポイント下方修正した。2年連続で近年の平均を大幅に下回る成長率となると予測した。輸出産業は2024年にユーロ圏の景気低迷の影響を受け、投資は需要の減少と資金調達コストの上昇に直面して、低調な伸びにとどまるとの見方を示した。同時に、個人消費支出は今後も景気を下支え、雇用も予測を下回るペースながら増加するとした。失業率については、2023年2.0%、2024年は景気減速の影響を受けて2.3%と予測した。

消費者物価指数(CPI)上昇率は、他国と同様に、スイスでもインフレ圧力が弱まっていることから、2023年に2.1%(前回9月予測:2.2%)、2024 年に1.9%(前回予測と同じ)と予測。企業を対象に実施した調査では、購買価格の低下と株価の高値、加えて、2024年1月1日からの工業製品の輸入に係る関税撤廃(2023年12月19日記事参照)によるインフレ緩和を示唆した。一方で、電気料金や付加価値税(VAT)、家賃の引き上げにより、インフレ圧力が高まる可能性は高い。このため、SECOは、CPI上昇率が1.1%まで大幅に低下するのは2025年以降になると見通している。

SECOは、2025年には実体経済が正常化し、世界経済、とりわけ欧州経済が過去2年間にわたる低迷から回復するとの見込みから、スイスの輸出と投資も回復するとした。金融環境に関連するリスクが依然として決定要因となるが、こうした要素を考慮した上で、2025年のGDP成長率は1.7%、年間平均失業率は2.5%との予測を示した。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年はマイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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