輸出製造業への税制インセンティブ適用の届け出方法など官報公示

(メキシコ)

メキシコ発

2023年12月15日

メキシコ大蔵公債省は12月5日、連邦官報で2023年度税務細則(RMF2023)第9次改定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、10月11日付政令に基づく輸出製造業への税制インセンティブ(2023年10月12日記事参照)を適用する際の細則(第11.12章)を明らかにした。同政令に基づき、投資の即時償却の恩典(2023~2024年)や、従業員研修費の追加費用控除の恩典(2023~2025年)の適用を希望する企業は、第9次改正で盛り込まれたRMF2023の別添1-Aに定めた手続きガイド1/DEC-13に従い、国税庁(SAT)に対してSATポータルサイト(Mi portal)を通じて届け出る必要がある(第11.12.1則)。

また、政令に基づき、インセンティブ適用に関連する特別な記録について、企業が税務上作成し保存する義務のある会計帳簿の一環として整備する必要があるが、細則では、即時償却を適用した場合の記録(第11.12.2則I、注1)、研修費の追加費用控除を適用した場合の記録(第11.12.2則II、注2)について詳細を定めた。さらに、投資対象資産が「新品」であることを証明する文書として、(1)2023年10月12日~2024年12月31日に発行されたインターネット税務証憑(CFDI、電子インボイス)、(2)支出が確認できるバンクステートメント、(3)出金伝票、(4)売買契約書(財の詳細が分かるもの、国内調達の場合)、(5)外国居住者発行のインボイスと輸入申告書、別添書類(輸入資産の場合)を会計帳簿の一環として保存する必要があるとしている(第11.12.5則)。

このほか、途中でインセンティブ適用の要件を満たさなくなった場合の申告・納税方法(第11.12.3則)、2023年以降に操業を開始した企業の研修費追加費用控除の算出方法(第11.12.4則)などを定めた。

輸出比率の詳細は曖昧なまま、WTO違反という声も

今回の細則は、インセンティブ適用の要件となる輸出比率(50%以上)を計算するための輸出額に、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業プログラム(IMMEX)などを利用した間接輸出(バーチャル輸出)を含むことができるのかが明確になっていない。

また、税制インセンティブの要件として輸出を義務付けているため、WTOの補助金および相殺措置に関する協定が禁止する輸出補助金や貿易関連投資措置(TRIMs)に関する協定が禁止するパフォーマンス要求と見なされるリスクがあり、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の規定にも違反するとの指摘する識者もいる。ラケル・ブエンロストロ経済相は11月16日、当地経済紙「エル・フィナンシエロ」のインタビューで、米国政府からも懸念が伝えられたため、輸出を条件としないかたちに制度を変更することを大蔵公債省と検討していると語っている(11月16日付)。ただし、現時点で10月11日付政令の内容は改正されていない。

(注1)「出金伝票や関連計算書類に加え、資産の購入日、品名、「新品」であること、初期投資額、インフレ調整評価額、即時償却率および償却額、当該資産と企業の業態や主要経済活動との関係性、どのようなプロセス・活動で用いられるかなどについて特定することを可能にする文書」と定めている。

(注2)「出金伝票や関連計算書類に加え、企業の経済活動に関連した技術的・科学的見識を与える目的でのどのような研修費用か、対象10業種に関連する研修かどうか、研修を受けた従業員のリスト、追加費用控除を適用する年度の研修費用、2020年~2022年の研修費用、2020~2022年度平均額からの対象年度研修費用の増加額、算出された追加費用控除額について特定することを可能にする文書」と定めている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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