メドテック支援プログラム「Origin Japan」をメルボルンで開催、スパインクロニクルジャパンが特別賞

(オーストラリア、日本)

シドニー発

2023年12月14日

ジェトロは11月22~30日、オーストラリアのメルボルンを拠点とする医療・ヘルスケア・バイオ分野専門のアクセラレーター(注1)の「メドテックアクチュエーター」(MedTech Actuator)とともに、オリジン・ジャパン(Origin Japan)プログラムを開催した。同プログラムは、日本のスタートアップ(SU)のグローバル展開を意識した事業化をサポートするもので、前年に続いてメルボルンで開催された。

同プログラムは、主にプレシードからシード期(注2)といった初期段階のSUと起業家が対象となり、日本からは計13チームが参加した。大阪での2日間のワークショップの最後に行われたピッチコンテストで選抜された以下の4チーム(うち1チームは日本からオンライン参加)がメルボルンでのプログラムに参加した。

  1. エーアイ・フォー・エーエスディー(AI4ASD):自閉スペクトラム症(ASD)の早期スクリーニングの課題に対して、人工知能(AI)技術を活用し、医療資源にかかわらず、患者が必要とする支援につなぐ
  2. フェアメド(FairMed):血管内手術でAIを活用したナビゲーションシステムの開発
  3. スマイルカーブ(SMILE CURVE): 思春期に発症する側弯症の早期発見を可能にする検査システムの構築・世界展開
  4. スパインクロニクルジャパン: 高齢者に最適な新しい脊椎手術インプラントの開発・世界展開

日本の参加チームはメルボルンで、現地のSUや起業家らと一緒に、効果的なピッチの手法や国際展開を見据えたマーケティング、資金調達、知的財産権に関する講義を受けたほか、現地の大学や研究機関も訪問し、初期段階のSUにとって必要となる知見や人脈を深めていた。

プログラム中、現地メンターや講師が説明していたオーストラリア市場のSUにとってのメリットは次のとおり(2020年6月18日付地域・分析レポート参照)。

  • ビクトリア州で起業するスタートアップには医療・ヘルスケア関連が多く、エコシステムが成熟している。
  • オーストラリアは市場としては小さいが、英語圏の市場に初めて参入する際(テストマーケティング)に最適な市場だ。
  • 治験を行う費用が比較的安価で、かかる時間も短い。医者も新しい技術にオープンだ。
  • オーストラリアでの治験結果を基に、米国食品医薬品局(FDA)へ申請も可能。FDAが承認すれば、他国の認証機関でも承認されるケースが多い。
写真 現地メンターから個別指導を受ける日本の参加SUの人たち(ジェトロ撮影)

現地メンターから個別指導を受ける日本の参加SUの人たち(ジェトロ撮影)

プログラム最終日には、ベンチャーキャピタル、大学、政府機関、医療メーカー、コンサルティングファームなど現地SUエコシステムに関わる関係者に加え、別プログラムでメルボルンに来ていたシンガポールとスペインのSUが一堂に会し、ネットワーキングディナーを開催。その中のメインイベントとして、ピッチコンテストを行った。日本のSU代表として最終選抜されたスパインクロニクルジャパンの海外事業開発部長の北川亮氏が登壇し、来場者の投票によって選ばれる特別賞「ピープルズチョイスアワード(People's Choice Award)」を受賞した。このプログラムで日本のSUが受賞するのは初めて。北川氏は「ジェトロやメドテックアクチュエーター、他の日本SUからのサポートのおかげで、このような素晴らしい賞を受けることができた。関係者の皆さまには大変感謝している。このプログラムを通じて当地にネットワークができたので、これらをうまく活用し、今後の海外での事業展開を頑張っていきたい」と述べ、期待感を表した。

写真 プログラム最終日に行われたピッチコンテストで、日本SU代表として登壇したスパインクロニクルジャパンの北川氏(ジェトロ撮影)

プログラム最終日に行われたピッチコンテストで、日本SU代表として登壇した北川氏(ジェトロ撮影)

(注1)スタートアップ企業や起業家をサポートし、事業成長を促進させる企業や組織。

(注2)製品やサービスなどのアイデアを思い付いた段階から、ビジネスモデルやコンセプトなどの大枠ができた段階までのこと(製品・サービス化まではできていない)。

(児島亨)

(オーストラリア、日本)

ビジネス短信 ff3bf5791bd277ac