2023年の日本の農林水産物・食品輸出額、前年比2.9%増

(日本、世界)

農林水産食品部市場開拓課

2024年01月31日

日本の農林水産省が1月30日に公表した「農林水産物輸出入情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、財務省貿易統計に基づく2023年の農林水産物・食品輸出額(確報値)は、前年比2.9%増の1兆4,547億円(少額貨物輸出額961億円を含む)だった。円安が追い風となり、上半期(1~6月期)の輸出額は前年同期比9.6%増と、比較的好調だったものの、2023年8月24日から開始された東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の放出以降、主要輸出相手国・地域の中国などが日本産水産物に対する輸入規制を強化したことで、下半期(7~12月期)は2.9%減と落ち込んだ。

輸出額上位3品目は、1位がアルコール飲料(1,350億円、前年比3.0%減)、2位はホタテ貝(生鮮・冷凍・冷蔵など、689億円、24.4%減)、3位は牛肉(くず肉を含む、570億円、11.0%増)だった。アルコール飲料のうち、韓国やタイで需要が伸びたビールの輸出額は66.6%増加した一方、中国の景気減速や欧米市場で長引く物価高の影響もあり、日本酒(13.5%減)やウイスキー(10.6%減)の輸出が振るわなかった。ホタテ貝については、輸出先の約6割を占める中国と香港が輸入規制を導入したことが響いた(注)。

牛肉に関しては、新型コロナウイルスに関連した外出規制が撤廃されたことで、香港や台湾で外食需要が回復したことが輸出を後押しした。

輸出額上位3カ国・地域は、1位が中国(2,376億円、前年比14.6%減)、2位は香港(2,365億円、13.4%増)、3位は米国(2,062億円、6.4%増)だった。中国向けでは、主要輸出品目のアルコール飲料(17.0%減)のほか、ホタテ貝(44.6%減)や乾燥ナマコ(19.8%減)など、水産物が軒並み減少した。水産物以外でも、菓子(米菓を除く、20.1%減)やインスタントコーヒー(20.4%減)の輸出も減少した。

他方、香港向けでは、真珠の輸出が前年の2.2倍の384億円に拡大した。2023年3月には宝石・宝飾品の大型国際見本市の「香港国際珠宝展」が4年ぶりにリアルで開催されたこともあり、日本からの輸出に弾みがついた。米国向けでは、物価高と在庫調整が長引き、アルコール飲料の輸出が前年比11.4%減の237億円となったが、ホタテ貝(119億円、52.5%増)や緑茶(157億円、49.6%増)の輸出が大きく拡大した。ホタテ貝については、中国で加工処理されて米国に再輸出されていたものが、日本からの直接輸出に切り替わる動きがみられる。

日本の農林水産物・食品の輸出額のうち水産物が占める割合は約3割、このうち、輸入規制を導入した中国や香港向けの水産物輸出が占める割合は4割に上る。日本政府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは2025年までに農林水産物・食品の年間輸出額を2兆円、2030年には5兆円に拡大するという目標を掲げている。目標を達成するには、水産物の輸出先の多角化が急務となる。

(注)ALPS処理水放出後に日本産水産物に輸入停止措置を講じた国・地域は中国、ロシア、香港、マカオ。各国・地域ごとに規制対象となる品目や原産地が異なるため、詳細は農林水産省「ALPS処理水の海洋放出に伴い規制を強化した国・地域に関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照。

(安東利華)

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