中南米進出日系企業実態調査、景況感が全世界の5.4倍の高さに

(中南米、アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ)

調査部米州課

2024年01月09日

ジェトロは2023年12月26日、「2023年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」結果を発表した。

2023年の営業黒字見込みの割合は中南米全体で前年比1ポイント(pt)増の64.8%、景況感を示すDI値(注)は前年比4pt増の24.3ptだった。両指標ともに世界全地域計を上回り、特にDI値は世界全地域計(4.5pt)の5.4倍となった。

これを牽引したのはメキシコとブラジルだ。9月の実質金利は両国ともに米国の3.5倍超と世界主要国で1位、2位を記録した。現地通貨高にもかかわらず、経済成長と失業率低下を維持したことが、現地市場ニーズの拡大と輸入調達コスト低下に作用し、DI値改善につながった。メキシコでは、好調な米国経済も自動車生産の需要を拡大した。ブラジルでは、自動車ほか幅広い産業で市場ニーズが拡大した。中南米全体の2024年DI値見通しはさらに上昇し、38.4ptに達する。

今後1~2年の事業拡大割合は、前年と比べて6.5pt上昇し、54.4%となった。世界全地域計(47.0%)より7.4pt高く、インドを含む南西アジアに次ぐ地域となった。事業拡大割合を牽引したのはブラジルとメキシコだが、世界主要国でトップとなったブラジルの事業拡大割合の前年比増加幅(14.7pt)が際立っている。

事業拡大の要因は、いずれの国も「現地市場ニーズの拡大」だった。ペルーやチリの太平洋側諸国では、銅を中心とした鉱業と農水産物が主力で、「輸出の増加」の割合が相対的に高い。拡大する機能は、いずれの国も販売機能がトップ。次いで新規事業開発、カスタマーサービスの順となった。ニアショアリング(生産拠点を消費地の近隣国に移転する)の影響から、米国市場向けのメキシコ、ブラジル市場向けのアルゼンチンのそれぞれで生産機能強化の比重が他国より高かった。

国別で目立った動きとしては、在メキシコ日系企業で調達先変更と生産拠点移転が顕著となる一方で、同国では特に工場作業員不足が深刻化した。

在メキシコ日系企業で調達先を見直す企業は、43社で自動車関連が多い。日本からの見直しが30件と最も多く、うち21件がメキシコ国内への見直し。生産地の見直しも15社(18件)で、主に米国、東アジア、ASEANからメキシコ国内(計9件)への見直しとなっている。

メキシコ進出日系企業では、人件費高騰を投資環境悪化のトップ項目(46.5%)にあげており、特に工場作業員の不足が「とても深刻」(全体の36.8%)と他の職種不足より際立っている。

今回の調査は、2023年8月23日~9月27日に実施した。中南米に現地法人(日本からの直接投資または間接出資比率が10%以上)や支店の形態で拠点を構えている企業721社にアンケートを送付し、うち455社(製造業219社、非製造業236社)から回答を得た。調査は1999年度から毎年実施しており、今回で24回目。調査結果の詳細ジェトロ・ウェブサイトに掲載されている。

(注)当該年の営業利益見込みが、前年に比べて「改善」と答えた比率から「悪化」と答えた比率を引いた数値。

(大久保敦)

(中南米、アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ)

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