2024年のGDP成長率予測は1.6%、インフレ抑制措置の延長で消費下支え

(スペイン)

マドリード発

2024年01月09日

スペイン中央銀行は2023年12月19日に発表したマクロ経済予測で、2024年の実質GDP成長率を1.6%とし、2023年の2.4%から減速する見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示した(添付資料表参照)。

同予測によると、世界的な金融引き締めや景気弱含みの影響を受け、2023年後半からスペイン経済は減速基調に転じており、2024年に入っても同様の状況が続くとした。1年前の2022年12月時点の予測では、2024年のGDP成長率を2.7%と予測しており、1.1ポイントの大幅な下方修正となったが、これはスペイン国家統計局(INE)のGDP値改定により、新型コロナウイルス禍前の水準へのGDP回復時期が2022年第3四半期と、当初予想よりも約半年前倒しされたことが要因。しかし、金融環境の悪化と地政学的不確実性に見舞われる中、スペイン経済は強靭(きょうじん)さを示しており、引き続きユーロ圏平均(1.2%)を上回る成長率となる予測だ。

景気の牽引役は内需で、インフレ緩和、底堅い雇用創出、賃金上昇を通じた実質所得の増加により家計消費が押し上げられ、新型コロナ禍からのEU復興基金による事業がようやく加速することにより設備投資も活発となる。外需はインバウンド観光が減速するほか、その他の財・サービス輸出も過去2年間の力強さは失われ、輸入の伸びと相殺されてマイナスとなる見通し。内需下支えの鍵となる消費者物価指数(CPI)上昇率は、総合指数では3.3%と前年比0.1ポイントの低下にとどまるが、エネルギー・資源コストの低下や政府のインフレ抑制策が反映され、エネルギーと生鮮食品を除くコアCPIは1.9%と前年比2.2ポイントの大幅低下が予測される。

インフレ抑制と財政負担の両立に苦慮

政府は2023年12月27日の閣議で、インフレ抑制策の延長を承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。公共交通機関の利用料金の補助や、家賃改定率の規制(上限:年3%)を2024年末まで延長。パンや乳製品、卵、青果類などの基礎食料品やオリーブ油などの特定品目に対する付加価値税率の引き下げを同年6月末まで維持する。他方、エネルギー価格の安定化傾向を受け、電力・ガスなどのエネルギー税の軽減税率は段階的に正常化される。エネルギー減税は最も財政負担の大きい措置でもあることから、今後適用が再開されるEUの財政規律に配慮したかたちだ。

また、税収確保のため、2023年に導入されたエネルギー企業、金融機関、富裕層への時限的課税を2024年末まで延長することも承認した。他方で、脱炭素化を伴う戦略的投資に対しては2024年1月から税額控除を行うとした。エネルギー大手などは同課税措置の延長に強く反発し、これではグリーン水素などの長期的投資がより競争力のある国に流出してしまうと批判していたため、投資税額控除によってこうした批判に対処する。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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