紅海の緊迫化で欧米への海上運賃が前年末比6割上昇、衣料品や水産物輸出に影響

(ベトナム)

ホーチミン発

2024年02月07日

紅海とスエズ運河の航路回避の動きに伴い、ベトナムから欧米向けの海上運賃の上昇が進んでいる。ベトナム海事局の報告によると、アジア地域から欧州、米国向けの海上運賃は1月第1週に2023年末比で60%、前年同期比で25%上昇した。

具体的には、ベトナムから米国西海岸向けの40フィートコンテナの海上運賃は2,650ドル、米国東海岸向けは3,900ドル、欧州向けは4,900ドルに値上がりしたという。また、アジアから欧州への最短航路は紅海とスエズ運河を経由するが、2023年末から紅海の緊迫化に伴い、海運企業は南アフリカ共和国の喜望峰を経由する航路に変更。輸送日数も以前より10~14日長くかかり、海上運賃の高騰を招いている(「トイチェ」紙1月20日)。

海運の混乱を受け、航空・海上運賃情報プラットフォームのゼネタによると、ベトナムから欧州への主要な衣料品輸出ルートで航空貨物が季節外れの急増を見せており、同ルートの1月14日までの週間貨物量は前週比62%増加し、航空運賃は10%上昇した。(ロイター1月19日)。

ベトナムの各業界関係者は輸出活動への影響を次のように述べた(「ティエンフォン」1月30日、「VOV」1月24日)。

  • ベトナム繊維アパレル協会(VITAS):ベトナムの繊維・衣料品企業の主な輸出先は欧米。数週間前から多くの出荷が迂回輸送を余儀なくされ、納期が2〜3週間延長されている。
  • 水産物の輸出を専門とするカファテックス・シーフードのゼネラルディレクターのグエン・バン・チャック氏:ベトナムの水産物輸出の最大80%が米国の東海岸、カナダ、欧州向けで、紅海航路回避の影響を大きく受けるため、水産業界は困難に直面している。輸送日数の長期化が続けば、コンテナ需給が逼迫する恐れもあり、海上運賃のさらなる上昇が予想される。そのため、北東アジア市場への一部展開を検討している。
  • ベトナム機械企業協会(VAMI)のダオ・ファン・ロン会長:紅海情勢の影響はあるものの、ベトナムの機械メーカーは国内または近隣諸国の取引先向けに生産を行っているため、他の産業ほど輸出活動に影響は出ていない。

欧米向けコンテナ貨物の海上運賃高騰を受け、交通運輸省はベトナム海事局や関連機関に対し、円滑な港湾運営を確保し、特に欧米向けのコンテナ貨物の船舶の入出港手続きや荷物の積み下ろしの迅速化を要請した。また、欧米に輸送ルートを持つ海外の海運企業を国内に誘致し、ベトナムから欧米への海上輸送の需要を確保する施策を講じるよう、同海事局に指示した。

(新田和葉)

(ベトナム)

ビジネス短信 3f648dd7c50b4e6e