トルコ・シリア大地震から1年、被災地ハタイの現状

(トルコ、シリア、日本、中国、カタール)

イスタンブール発

2024年02月20日

トルコ南部を202326日に襲った大地震発生(2023年2月8日記事2023年2月17日記事参照)から1年が経過した。被災地では、なお多くの人々がコンテナハウスやテントでの生活を余儀なくされており、日常生活の正常化のめどはたっていない。今回、最大の被害を被ったハタイ県の被災地を視察した(278日)。

ハタイはトルコ最南端に位置する県で、西部は東地中海に面し、南部と東部はシリア国境に接し、ヌル山脈を挟んで内陸部と沿岸部に分かれる。沿岸部はイスケンデルンの諸港を擁する工業地域で、鉄鋼産業で知られる。内陸部は県都アンタキヤを中心に、主に農業や軽工業が中核となっている。ハタイ県の人口は2023年時点で、前年から141,403人減少して1544,640人となった。被災地11県で最大の人口減となっている。ハタイだけで推定で約22,000人(被災地全体で約56,000人)が犠牲となり、多くの被災者がメルスィンなどの他県に避難し、9万~10万人がコンテナやテントでの生活を送っているという。

写真 ハタイの県都アンタキヤでは、被災家屋の解体や撤去は進んでいるが、がれきがなおそこかしこに積み上げられ、所有権の問題を抱えるビルなどは解体すら行われていない(ジェトロ撮影)

ハタイの県都アンタキヤでは、被災家屋の解体や撤去は進んでいるが、がれきがなおそこかしこに積み上げられ、所有権の問題を抱えるビルなどは解体すら行われていない(ジェトロ撮影)

ハタイの経済活動は、イスケンデルンの工場集積地の被害が軽微だったこともあり、稼働が再開されているが、人口減による労働力不足が深刻となっている。アンタキヤ市当局によると、正常化には5年から10年を要するといい、大企業の国内移転の慰留に努めており、震災後に帰還を考える地元企業には奨励金を与えるという。

写真 (左)震災で火災が報告されたイスケンデルンのリマク港は正常化している、(中央)民間ビジネスは食品関連から始まっているという、(右)アンタクヤ、クルトゥルシュ通り(ジェトロ撮影)

(左)震災で火災が報告されたイスケンデルンのリマク港は正常化している、(中央)民間ビジネスは食品関連から始まっているという、(右)アンタクヤ、クルトゥルシュ通り(ジェトロ撮影)

ハタイでの震災復興では、トルコの民間企業からコチ財団やジナル財団、カラデニズ財団などが支援を行っている。国外からの支援としては、カタールや中国などの名が聞かれ、NATOや国連も積極的という。日本企業もコンテナハウスの寄贈や救援金などの支援を行っている。

写真 (左)カラデニズ財団がイスケンデルン港に設置した住居船と学校船。約1,500人の収容能力があり、衣食住、職業訓練を含む教育、医療の全てがほぼ無料で提供されている、(右)商船三井(MOL)が寄贈したコンテナハウスの設置(ジェトロ撮影)

(左)カラデニズ財団がイスケンデルン港に設置した住居船と学校船。約1,500人の収容能力があり、衣食住、職業訓練を含む教育、医療の全てがほぼ無料で提供されている、(右)商船三井(MOL)が寄贈したコンテナハウスの設置(ジェトロ撮影)

(中島敏博、ディラ・イェネル)

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