ホタテの加工地多角化を目指し、ジェトロがベトナムにビジネスミッション派遣

(ベトナム、日本)

海外展開支援部中堅中小企業課

2024年02月07日

ジェトロは1月22〜26日、農林水産省と経済産業省、在日米国大使館などの協力の下、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水放出に伴う緊急支援事業の一環として、ベトナムに初めて、ホタテ加工施設などの視察・商談ミッションを派遣した。ミッションには生産者や加工業者、商社など、ホタテの加工地多角化を目指す日本企業12社が参加した。

新たなホタテの加工地として、ベトナムは(1)ASEAN諸国の中で安価な人件費(2)エビやカキなどの水産物の加工実績、(3)タイなどに比べて再輸出を前提とした場合の輸入障壁の低さなどの特徴があり、日本の水産事業者の関心が高まっている。

今回のミッションでは、ベトナム北部3カ所、南部6カ所の計9カ所の加工施設を訪問した。訪問先からの企業説明と質疑応答に加え、うち8カ所では加工工場の視察も実施。ホタテの加工地多角化を検討する上で必要な加工技術のレベルや工場の衛生管理状況を直接確認できる機会となった。訪問した加工施設は、在日米国大使館から得た企業リストに掲載されていたものに加え、ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)の紹介や、ジェトロのハノイ事務所とホーチミン事務所の調査によって新たに発掘した施設も含まれる。

ミッション1日目は、ハノイで午前、ジェトロとVASEPのブリーフィングを実施した。その後、VASEPの紹介によって集まったベトナム水産加工企業4社と日本企業の間でビジネスマッチングが行われた。同日午後から2日目午後にかけては、北部3カ所の施設を訪問した。工場視察では、試験的に輸入した日本産ホタテの殻むきや玉冷(注)加工、エビやカキなどの水産物加工の様子を確認した。3社とも日本との取引経験があり、日本産ホタテの加工に関心を示した。

写真 ジェトロ・ハノイ事務所でのブリーフィング(ジェトロ撮影)

ジェトロ・ハノイ事務所でのブリーフィング(ジェトロ撮影)

写真 工場内でホタテの加工(ジェトロ撮影)

工場内でホタテの加工(ジェトロ撮影)

3~5日目には、ベトナム南部6施設を訪問した。南部は従来、メコン川の汽水域を生かした水産物の養殖が盛んで〔2020年3月農業・水産業関連企業リスト(南部ベトナム編)参照PDFファイル(10.1MB)〕、農林水産業が経済を支える産業の1つと言える。今回訪問した施設でも、比較的高度なホタテ加工技術を持つ企業や、工場を複数有する企業、研究開発(R&D)室や工場視察ルートを完備した企業など、日本産ホタテの加工に期待がかかる企業が多数を占めた。

ミッションに参加した日本企業からは、「新たなホタテの加工地として前向きに検討できる企業と出会うことができ、ほかの参加企業ともコミュニケーションを取れたことは大きな経験になった」「ベトナムでのホタテ加工に取り組むには絶好の機会であることが分かった」などのコメントがあった。一方で「ベトナムの工場の現状を把握できたが、保税倉庫の有無やその機能、取引方法、輸出先の開拓(委託加工の場合)など、加工以外の課題も残る」との声もあった。

ジェトロは今後、3月13~16日にメキシコに「ホタテ加工施設等視察・米国商談ミッション」を派遣する。メキシコ・エンセナダ市でのホタテ加工の可能性を探るとともに、米国バイヤーとの商談会も実施する予定だ。

(注)冷凍ホタテ貝柱の通称で、Lサイズ以上のものを指す。

(宮下葉月)

(ベトナム、日本)

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