2024年内に実施予定の大統領選挙を見据えた政治動向に関心集まる

(スリランカ)

コロンボ発

2024年02月14日

スリランカの事業運営では、政治動向の情報収集が重要だ。ジェトロが実施した「2023年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)(2023年11月)」では、投資環境上のリスクについて、スリランカに進出する日系企業のうち93.5%が「不安定な政治・社会情勢」、77.4%が「現地政府の不透明な政策運営」を挙げている。

同国では、正確な時期は確定していないが、憲法上、2024年内に大統領選挙が予定される。ラニル・ウィクラマシンハ大統領は、2023年10月に開催された、自身が党首を務める統一国民党(UNP)の党大会で、2024年に大統領選挙が行われ、その後に国会議員選挙が続き、2025年前半に地方議会選挙が実施される予定だと述べている(2024年2月現在)。

今後、選挙に向けて政党間の連携が注目される。UNPは国会で1議席しか確保していないため、国会の定数225のうち過半数の145議席を持ちマヒンダ・ラージャパクサ元大統領が党首を務めるスリランカ人民党(SLPP)や、2020年の国会選挙でUNPから分裂し54議席を確保した統一人民戦線(SJB)、マイトリパーラ・シリセーナ元大統領が属するスリランカ自由党(SLFP)などとの連携が予想されている。ウィクラマシンハ大統領は、2022年7月の国会議員による大統領選出投票の際にSLPPの一部の議員から支持を得たことで大統領に選ばれたとみられ、現在の内閣は、SLPP出身者が過半数を占めている(注1)。

加えて、腐敗や汚職の撲滅を掲げる国民の力(NPP)/人民解放戦線(JVP)や、税負担の軽減を求めるSJBの動向も関心を集める。両党ともに、政権を獲得した場合にはIMFによる拡大信用供与(EFF)プログラム(注2)の内容について、一定の変更を求める方針を示している。2024年1月にスリランカを訪問したIMF派遣団は、政府当局に加えて野党である両党の幹部とも面談を実施している(2024年1月30日記事参照)。NPP/JVP党首のアヌラ・クマーラ・ディサーナーヤカ氏は2月5日、インド・ニューデリーでスブラマンヤム・ジャイシャンカール外相と会談している。

スリランカの研究機関であるインスティテュート・フォー・ヘルスポリシー(Institute for Health Policy:IHP)は1月26日に2023年12月時点の国会議員選挙に関する投票意向推計調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを、1月30日に2023年12月時点の大統領選挙に関する投票意向推計調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。前者では「もし今日総選挙があったらどの政党に投票するか」、後者では「もし今日大統領選挙があったら誰に投票するか」を問い、ともに2023年12月に18歳以上の成人522人を対象に調査した。

その結果、国会議員選挙の投票意向調査ではNPP/JVPが39%でトップとなり、次いでSJBが27%、SLPPが10%、UNPが6%、ランカ・タミル連邦党(ITAK)が3%、スリランカ・ムスリム会議(SLMC)が3%、SLFPが2%だった。大統領選挙の投票意向調査では、NPP/JVP党首のディサーナーヤカ氏が50%でトップとなり、次いでSJB党首のサジット・プレマダーサ氏が33%、ウィクラマシンハ現大統領が9%、SLPPの候補者が8%だった。

(注1)荒井悦代「スリランカの政治・経済危機――ラージャパクサ一族支配の崩壊か?」アジア経済研究所『IDEスクエア』、2022年7月外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注2)IMFが2023年3月20日に正式に承認した、スリランカに対する4年間で総額約30億ドルの金融支援パッケージ(2023年3月22日記事参照)。

(大井裕貴)

(スリランカ)

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