インドネシア鉄鋼産業協会、CBAM導入に懸念表明

(インドネシア、EU)

ジャカルタ発

2024年02月06日

EUによる炭素国境調整メカニズム(CBAM、注)の移行期間が2023年10月1日に開始され、対象製品を輸入する事業者に対して、各四半期末から1カ月以内にCBAM移行期登録簿(Transitional Registry)へのCBAM報告書提出が義務付けられ、初回の提出期限となる1月末を迎えた。CBAMでは鉄・鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、水素、電力とその一部川下製品が対象製品となっており、インドネシアの鉄鋼業界などに影響が及ぶ見通しだ(注)。

地元紙「コンパス」は、2012年に110万トンだった鉄鋼の総輸出量が2022年には1,562万トンに急増したことを引用しつつ、CBAMの影響をインドネシアの主要輸出品の1つとして鉄鋼の存在を指摘していた(「コンパス」2023年8月19日)。

CBAMの移行期間終了後は、鉄鋼メーカーが排出する炭素量に応じて、炭素排出権証明書の購入というかたちで追加コストが発生する。インドネシア鉄鋼産業協会は、インドネシアからEU向け輸出の主要な鉄鋼生産ラインは石炭を原料に使用していることから、炭素排出権証明書の購入を避けることは難しく、欧州の鉄鋼製品や炭素排出量の少ない国との競争で不利になることが確実との見解を示した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2022年の国内鉄鋼メーカーによるEU向け鉄鋼製品の輸出は、金額ベースでは鉄鋼製品輸出全体の4%程度で、輸出額全体に占める対EU向け比率は少ないものの、インドネシアの製鉄企業はEU市場での利益減少やシェア低下に直面しかねないと指摘した。

また、中国や台湾の鉄鋼メーカーが生産する製品、特にステンレス鋼製品の多くにはインドネシアの鉄鋼製品が原材料として使用されており、鉄鋼製品の主要輸出先市場の中国や台湾への鉄鋼製品の輸出にも影響を与える可能性があるとした。

(注)CBAMの詳細は2023年8月31日付地域・分析レポート参照。CBAM規則では、移行期間を2023年10月1日から2025年12月31日までに設定。実施規則では、移行期間中、対象製品を輸入する事業者に対し、四半期ごとのCBAM報告書を各四半期末から1カ月以内にCBAM移行期登録簿(Transitional Registry)に提出することを義務付けている。

(八木沼洋文)

(インドネシア、EU)

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