第4四半期のGDP、通貨ペソ高の影響で輸出製造業が減速

(メキシコ)

メキシコ発

2024年02月29日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は2月22日、2023年第4四半期(10~12月)の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)を発表した。同四半期のGDPは前年同期比2.5%で、速報値(2024年2月2日記事参照)から0.1ポイント引き上げられたものの、季節調整済み前期比は0.08%で、堅調だった伸びに陰りが見え始めた。

2023年通年の成長率は3.2%で、速報値から0.1ポイント引き上げられ、中央銀行の予想(3.1%~3.5%)の範囲内に収まった。産業別では、農牧林・水産業が1.9%、鉱工業が3.5%、サービス業が3.1%となった。

2023年第4四半期の前年同期比成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧林・水産業は0.3%、鉱工業は2.8%、サービス業は2.4%と全てプラスだが、季節調整済み前期比(添付資料表2参照)では、農牧林・水産業はマイナス1.04%、鉱工業はマイナス0.13%、サービス業はプラス0.26%と前期よりも成長が鈍化した。

鉱工業では、政府が優先事業としている公共事業(注2)の影響により、建設業が前年同期比20.2%だったが、前期比では0.54%と、第3四半期の6.39%から大きく減少した。製造業は前年同期比1.0%減、前期比0.46%減と、ついに減少傾向に転じた。製造業のうち、輸送機器製造業は前年同期比4.0%と好調を維持しているが、それ以外では前年同期比でマイナス成長となっている業種もある。この要因としては、いまだ1ドル17ペソ台を推移しているペソ高の影響があるとみられ、輸出を行う製造業に悪影響が出ている。製造業の通年の成長率は0.9%にとどまり、前年の6.3%から大きく減速している。

サービス業の内訳をみると、卸売業が前年同期比6.7%、前期比1.00%で上昇を続けているものの、小売業は前年同期比では1.4%増加したが、前期比では0.30%減と、2四半期連続の減少となった。ホテル・レストラン業は前年同期比では2.0%、前期比でも1.45%と堅調に推移し、通年でも3.0%だった。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期以降不振を続けているビジネス支援サービスは前年同期比6.0%増、前期比3.30%増で、長期にわたったマイナス成長の期間から脱しつつある。

専門家はGDP減少の要因に政策金利の影響指摘

ムーディーズアナリティクスのアルフレッド・コウティニョ・ラテンアメリカ担当局長は「中銀の金融政策の引き締めにより、内需、特に家計消費の拡大が既に抑制されており、小売売上高にブレーキをもたらしている」と述べた。中銀は金融政策決定会合での議論を経て、政策金利(11.25%)を据え置くことを2月8日付のプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で発表している。

(注1)INEGIは、2023年第2四半期(4~6月)から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、2023年第1四半期(1~3月)以前の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。

(注2)アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権下で進められてきた4大プロジェクトのうち、マヤ観光鉄道(2020年5月25日記事参照)、テワンテペック地峡開発(2023年7月4日記事参照)への公共投資が拡大している。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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